国連人権特別報告者に呼ばれて、ミャンマー国軍によるロヒンギャ迫害の実態を伝えていた難民男性が、バングラ軍に突き出され、その後警察に拘束されていたことがきょう、分かった。
拘束されたのは難民の聞き取り調査を進める「Arakan Refugee Humanright and Peace Group」のリーダー、モヒブッラー氏(47歳)。本人によると、軍は氏の名前がイスラム武装勢力のリストに載っていないことことが分かると、警察に移送したという。
軍に突き出したのはバングラ警察の私服刑事と見られる。
モヒブッラー氏は20日、難民キャンプを視察した国連人権特別報告者のヤンヒ・リー氏に指名されて面会した。モヒブッラー氏率いる「Arakan Refugee Humanright and Peace Group」の調査が膨大で詳細にわたっていることをヤンヒ・リー氏が知っていたからだ。
Groupはこれまでに難民12万人から聞き取り調査を済ませた。最終的には75万人全員からミャンマーでの実態を聴く予定だ。2016年10月に起きた国軍による迫害から逃れてきた人々も含めてである。
田中はGroupの聞き取り調査に同行した。昨年10月から続いているだけに難民キャンプでも定着した感がある。難民たちは調査員に心を開いていた。調査員が難民一人ひとりの事情をよく把握しているのには驚く。
「いつ、どこで、どうやって、ミャンマー国軍に襲撃されたのか?」「家は焼かれたか?」「誰が殺されたか?」「レイプは?」「どうやって逃げたか?」・・・
政府統計のような ざっくりした数字 ではなく、ひとつ一つ具体的に証明される数字には有無を言わせぬ説得力がある。
Groupの調査員ヌルアロン氏は、「少なくとも1万1千人が殺され、7万5千戸が家を焼かれた。レイプされた女性は1,100人」と見る。数字はグループで共有されている。(ちなみに国境なき医師団は6,700人が殺害された、とする)
ミャンマーのスーチー国家顧問が認めた「国軍との衝突でARSA(アラカン・ロヒンギャ救世軍)の戦闘員10人が死亡」とは天と地の開きだ。
どちらが実態を物語っているかは、言うまでもないだろう。
国際社会周知の事実であるのにもかかわらず、ミャンマー政府はロヒンギャ虐待の実態を隠したがる。
少しでも早くロヒンギャ難民をミャンマーに返したいバングラ政府も同様の姿勢だ。
国連人権特別報告者ヤンヒ・リー氏と会った調査グループのリーダーは逮捕され、氏の難民キャンプ視察を取材していた田中はバングラ警察からツマミ出された。両者はきれいに辻褄が合う。西側メディアは1社たりともいなかった。
22日、警察に拘束されたモヒブッラー氏は24日、釈放されたが、外国人と会うことは禁止されている。
モヒブッラー氏が拘束された直接の容疑は、「人々を扇動し社会を不安に陥れた罪」。国連人権特別報告者が20日、難民キャンプを訪れた際、約1千人のロヒンギャがヒューマンチェーンを作り、強制送還に反対する意思表示をした。
警察はモヒブッラー氏を、その首謀者としたのである。
〜終わり~
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