安倍首相が最近、持論の憲法改正をピタリと言わなくなった。憲法改正の可能性が少なくなったからではない。その逆だ。
憲法改正の発議に必要とされる衆参両院で3分の2以上を獲れる可能性が出てきたからだ。
与党は前回(2013年)の参院選で大勝ちしているため、今回の改選議席に17議席上積みするだけで3分の2に手が届く。
憲法改正は現実味を帯びてきたのである。
「32の一人区で野党統一」。マスコミは麗々しく書きたてる。だが選挙ドットコムの予測では、野党が勝てるのは、わずか4選挙区だけだ。
比例区48議席と複数区41議席も与党が圧勝する。(野党が比例区を統一名簿にすれば、事情は変わってくるが)
全国各地に取材網を持ち、永田町に情報網を張り巡らせているマスコミが、参院選で与党が圧勝することを知らないはずがない。
官邸の意向を忖度してか、マスコミは憲法改正をあえて選挙の争点にしていない。
5日朝の『NHK日曜討論』が象徴的だった。番組のテーマを「参院選の争点」としながら時間のほとんどをアベノミクスに割いた。憲法改正について触れたのは、75分間のうちわずか11分間だった。
短い時間だったが、自民党の鶴保庸介・参院政審会長が真相を漏らした ―
司会者から「安倍さんは憲法改正の中身について具体的に示していないが、改憲勢力で3分の2を目指すということでよいのか」と問われると、鶴保氏は「我々としては(憲法改正の中身について)早急に議論を開始させて頂きたい」。
自民党の選挙情勢調査はマスコミよりも精緻と言われる。鶴保政審会長は改憲勢力で3分の2以上を確保できることを知っているからポロっと出たのだろう。
法律家でもある福島みずほ議員が次のように指摘した ー
「憲法違反と自民党がずっと60年間言ってきた集団的自衛権の行使を合憲として戦争法を強行したのは安倍内閣だ。
憲法をここまで踏みにじる安倍政権が次に憲法改正をするというのであれば、これはすさまじい立憲主義の破壊が起きる。自由や民主主義が危ないとすさまじく危機感を持っている。
自民党はすでに自民党改憲案を発表しているが、説教たれたれ憲法、憲法ですらない。なぜか。憲法は権力を縛るものなのに国民を縛るものになっている」。
民主主義に警鐘を鳴らす福島みずほ議員が今回の参議院選挙では当落線上にあるとの説もある。民主主義が危機にあるということを伝えないマスコミの争点隠しに乗ってはならない。
~終わり~
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