憲法記念日のきょう、改憲派が集会を開いた。今年のテーマは「緊急事態条項」だ。
東京・砂防会館で行なわれた集会には1200人近くの参加者が集まり、改憲に賛成する国会議員、憲法学者などが顔を揃えた。(主催:民間憲法臨調 / 美しい日本の憲法を作る国民の会)
閣僚を辞任後、自民党総裁特別補佐として政権近くにいる下村博文議員や民進党の松原仁議員、日本のこころを大切にする党の中山恭子代表らが出席した。
まず、主催者代表の櫻井よしこ氏が「内の危機、外の危機。今のままでは日本国を守ることができない。一日も早い憲法改正を求めています」と切々と訴えた。
内の危機とは大地震だ。櫻井氏は東日本大震災で弱者を救えなかった元凶が憲法にあると断じた。財産権があるから車を動かせなかったからだという。
「首都直下地震があると専門家が言っている。起きたら日本国の存亡に関わる」。櫻井氏はこう述べた上で、「各政党が最大公約数としている緊急事態条項から出発するのがよいと思う」と結んだ。
次に外遊中の安倍首相が自民党総裁としてビデオメッセージを寄せた。メッセージの中で安倍総裁は「憲法改正に向けてともに頑張りましょう!」とこぶしを振り上げた。
登壇者らは異口同音に「7月の参議院選挙は改憲発議が可能な3分の2を占めるのかどうかが問われる。戦後史を画する重大な政治選択がなされる国政選挙だ」と強調した。
変だ。今日のNHKテレビに出演した自民党の高村副総裁は「改憲は参議院選挙の争点にならない」「国民が経済と言えば経済が争点」と否定したではないか。
彼らは仲間内の改憲派集会でだけ本音を明かしたのである。本当の争点は改憲か否かだ。そして改憲の突破口は緊急事態条項だ。だまされてはいけない。
下村議員は「96条の改正は今日の各紙でも賛否(両論)。だが、想定外のことが起きる緊急事態条項はだれもが反対しないだろう」とタネ明かしした。
集会は3人の改憲派憲法学者の一人、百地章・日大教授が声明を読み上げて散会した。「緊急事態条項が現行憲法にないのは、憲法の根本的欠陥以外の何物でもない」と。
独裁政治を招きかねないと懸念されている緊急事態条項をどうして憲法に盛り込む必要があるのだろうか。今日の集会では、必要性ばかりが強調され、議論はひとつも出て来なかった。
たとえ改憲派の集会であっても、一般市民には緊急事態条項の真の目的はまだ明かされていないように見えた。
~終わり~