拉致問題を最も巧みに政治利用し総理にまで上り詰めた男 ― アベ晋三の実態が明るみに出た。
拉致被害者・蓮池薫さんの兄、蓮池透さん(元拉致被害者家族会事務局長・現在は退会)が近著『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社刊)を引っさげて21日、日本外国特派員協会で会見を開いた。
透さんは まず 、「安倍さんは拉致問題においては日本では第一人者。政治利用して拉致問題を踏み台にして総理にまでなった。それほど重要なら、しっかり対応しろ」と訴えた。
拉致問題に進展がないと批判することは、これを最重要課題と位置づけてきた安倍政権を批判することを意味する。マスコミが「拉致問題に進展がない」と書けない理由だ。
帰国した拉致被害者5人が02年に日本の土を踏んだ時、アベ氏は「北に帰るな」と言ったとされるが、透さんはアベ氏の手柄話を否定した。
「弟を止めたのは私です」、透さんはきっぱりとした口調で言った。
拉致問題を政治的に利用した人たちは大勢いた。中山恭子元内閣参与(現参議院議員)をはじめ、ブルーリボンを胸につけた国会議員たち、右翼や活動家らは拉致問題に存在理由を見つけ出したのだ。アジアで常に加害者だった日本は、拉致問題では被害者でいられるからだ。
人生の膨大な時間を奪われてやっと帰国したのに、拉致被害者達の生活はまったく楽にならなかった。生活にはお金がいるが、カンパも国家予算も十分あるのに、お金は本人達に渡らない。
「帰国後に国民から寄せられた1億円を超えるカンパは、拉致被害者の手に渡っていない。子供達が帰国した際に数十万のお見舞い金が出ただけ」。
「政府の支援金は月額13万円で、収入があれば減額される。これでは絶対暮らしていけない」。ハングルの翻訳家として活動を始めた薫さんだったが、印税が入ると支給が途絶えたりしたため、とうとう一切の支援金を返上したという。
「まとめて日本で面倒みますと言うのでなければ(年配の拉致被害者は)帰ってこない。国の支援金13万円というのは知られていない。日本のマスコミには周知の事実であるのにも かかわらず、活字にしてこなかった」と、透さんは吐きすてた。
そして、こう付け加えた。「国民は手厚い待遇でのうのうと暮らしているんだろうな、と思っている」。
拉致被害者奪還を叫ぶ右寄りの政治家が被害者の事を何も考えていないのは明らかだった。マスコミも活動家も同罪だ。
「外国メディアの皆さん、どうかアベ首相と拉致の事を書いて下さい」ーー会見の主は最後に英語で語りかけた。日本のマスコミは眼中になかった。
「弟が北朝鮮から帰国して13年経ったのに、兄にとって拉致問題は終わっていないのか?」筆者は直接問うた。
「拉致問題はまだ全然終わっていない。弟が精神的に囚われている。解放したい」。透さんは言葉を噛みしめるように語った。
(文・竹内栄子)