
革命はテレビが伝える。トルコの若者は「革命」を意識していた。のるか反るかしかない状況だからだ。=23日、イスタンブール市役所前公園 撮影:田中龍作=
20代の女性がイスタンブール市役所前でプラカードを掲げていた。彼女によると「DIRENIS」とは「抵抗する」の意味だ。「私は死ぬまで抵抗する」。
市役所前の公園でデモ隊と警察の機動隊が衝突した。見渡す限り機動隊だ。強化プラスチックの盾を持ち完全武装した隊員は1千人を超えるだろう。
デモ隊はアタチュルクの旗を掲げながら、ジリジリと機動隊の最前線まで迫った。3mを切ったあたりで機動隊が催涙スプレーを噴霧した。
香港の民主化デモ(2019年)で使用されたペッパースプレーを田中も浴びたが、トルコの催涙スプレーの方がはるかに強烈だった。催涙弾を浴びせられたのと変わらない。
催涙弾は金属製の筒に入って飛んで来る。目に当たれば眼球粉砕で失明する。田中は2013年にトルコの反政府デモで被弾し手の甲を骨折した。
それでもデモ隊は怯まなかった。彼らは防毒マスクもゴーグルも着用していない。「死ぬまで抵抗する」は本気だったのだ。

「私は死ぬまで抵抗する」。=23日、イスタンブール市役所前 撮影:田中龍作=
2016年7月、クーデター未遂があった。軍の一部が反乱を起こし政権転覆を図ったが、治安部隊により鎮圧された。BBCによると4万5千人もが粛清された。エルドアン大統領は窮地を逃れた。
イスタンブール市役所の壁面には、このクーデター未遂事件で殉教した97人の遺影が飾られている。

催涙スプレーが噴霧された瞬間。それでもデモ隊は怯まなかった。=23日、イスタンブール市役所前公園 撮影:田中龍作=
デモ隊の若者たちは当然、クーデター未遂事件とその後の粛清を知っている。
きょう23日は、イマモール・イスタンブール市長の勾留請求が認められた。エルドアンの粛清が再び始まった。
民主派は危機感で一杯だ。死ぬまで抵抗しなかったら、自分が殺(や)られるのだ。

デモ隊には悲愴感が漂っていた。=23日、イスタンブール市役所前公園 撮影:田中龍作=
~終わり~
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トルコ情勢は重大な局面を迎えました。トルコは地域の大国としてウクライナ情勢や中東情勢に多大な影響を与えます。
日本の外交政策にも影響を及ぼすことになります。破産したら隅田川に身投げするくらいの決意で田中は取材に来ております。
御支援何とぞ申し上げるしだいです。