レバノンには48万人のパレスチナ難民がいて、12ヵ所のパレスチナ難民キャンプがある(UNRWAまとめ)。
イスラエル軍が首都ベイルートに侵攻してきて、ヒズボラとの間で市街戦になったら、難民キャンプが決戦場になるだろう。田中はどこに陣取って取材すればよいか。現在、苦悶している。
9年前、ベイルート郊外それもダヒヤのパレスチナ難民キャンプを訪れた時、本家パレスチナの難民キャンプと似ていることに軽い衝撃を覚えた。
狭い路地が迷路のように続く。「迷路のように作っているのはイスラエル軍を混乱させるためさ」。2008年~09年のガザ戦争の際、イスラム聖戦の戦闘員が明かしてくれた。
本家パレスチナの難民キャンプで最も迷路のようになっているのは、西岸ナブルスの難民キャンプだろう。大人一人がやっと通れるような小道が縦横に走る。しかも対戦車地雷が仕掛けられていたりする。
ナブルスの難民キャンプに行く度にレバノンの難民キャンプを想起する。イスラエルが3日に1回の頻度でナブルスの難民キャンプに押し入るのは、レバノンのヒズボラとの決戦を想定した予行演習ではないだろうか。
小さな子供をやたらと撃ち殺すイスラエル軍を見ていると、どう考えても対テロ作戦とは思えないのだ。
話をレバノンのパレスチナ難民キャンプに戻そう。
イスラエル軍に南部を追われベイルートまで敗走してきたヒズボラが、パレスチナ難民キャンプに立て籠もるのは必定だ。イスラエル軍も手を焼くだろう。
田中にとっても厄介だ。本家パレスチナの難民キャンプであれば、イスラエル軍が包囲していても、どこから忍び込んで、どこから逃げるかを把握している。潜入取材は可能である。
だがレバノンはそうはいかない。どうすれば修羅場の難民キャンプを取材できるか。
イスラエルはヒズボラを殲滅するつもりだ。田中は生きて、この戦争を伝え抜かなくてはならない。厳しい選択が迫られそうだ。
~終わり~
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【読者の皆様】
田中は3枚のクレジットカードをこすりまくって戦禍のレバノンにやってきました。大借金です。
中東の大国イランを巻き込んだ大規模戦争に発展しつつある今回の衝突を、現地から伝える日本人ジャーナリストは今のところ、田中龍作だけです。
資金が続く限りイスラエルとパレスチナの最終戦争を取材するもりです。皆様のお力でどうか支えて下さい。