こんなスキームがまかり通ったら、一等地にある日本中の公有地がすべて三井不動産に差し出されてしまう。
銀座と日比谷公園に挟まれ皇居の斜向かいに位置する「東京ミッドタウン日比谷」。日本屈指の一等地である。
同タウン内にある千代田区所有の土地・建物1990㎡(255億円相当)が、三井不動産等の運営する一般社団法人・日比谷エリアマネジメント(以下、エリマネ社)に無償で貸し出されている。
エリマネ社が土地・建物から得るテナント料などの純収益は年間4800~6200万円に上る。本来ならば千代田区が得ているはずの巨額資産である。
区民の莫大な財産に関する重要案件なのだが、議会にも知らせていないことが発覚した。2020年のことだ。
きっかけは—
石川雅己前区長が、一般販売されない超高級マンションの「事業協力者住戸」を三井不動産レジデンシャルから、妻と息子とで共同購入していたことが発覚したのである。
疑惑解明のため千代田区議会に百条委員会が設置された。
件の超高級マンションは建設にあたって千代田区の認可により高さ制限が緩和されたという経緯がある。許認可権は石川区長(当時)にあった。
話を日比谷ミッドタウンに戻そう。無償貸し付けされた土地・建物から得ているエリマネ社の純利益は予想の3倍に膨らんだ。
契約期間は20年で、エリマネ社の得た利益を千代田区に帰属させる規定もない。違約金もない。
修繕費用をエリマネ社が全額負担する法的規定もない。
エリマネ社にとって美味しいことだらけの契約となっているのだ。住民側は使用賃貸契約の見直し協議を求め、千代田区を相手取り訴訟を起こしている。
被告の千代田区側(エリマネ社・三井不動産)は「千代田区が行えない事業を代行・補佐する」「修繕費を負担する」として多大なコストがかかる旨を主張した。
ところが無償で貸した土地からエリマネが得る営業収入の85%は、テナント収入なのだ。「また貸し」である。エリマネ側が主張するような「事業」というには無理がある。
去る4月17日にあった口頭弁論で篠田賢治裁判長が質問した。「事業というのなら決算書はあるのか?」と。
エリマネ側の回答に唖然した。「決算書はない」というのだ。
裁判長はさらに質問した「契約期間の20年を過ぎた場合の修繕費はどうなるのか?」と。
エリマネ側からは回答とよべるものは出なかった。傍聴席からは失笑が漏れる有様だった。
錬金術はしっかりしていても、裁判の継続さえ難しくなるようなエリマネのズサンな運営である。
騙された千代田区がお粗末といってしまえばそれまでなのだが。
~終わり~
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《読者の皆様》
昨年末から借金が続いております。赤字に次ぐ赤字です。