世界中の批判を浴びながらも米国が国連安保理で拒否権を行使し、イスラエルのガザ戦争に肩入れするのには、れっきとした制度的根拠があった。(田中はそれを良しとしているわけではない)
AIPAC(アメリカ・イスラエル公共政策委員会)。日米合同委員会の「イスラエル・米国版」の存在である。全米ライフル協会を凌ぐ最強のロビイスト団体だ。
米国の政治家は国会議員になると「AIPACの政策に従う」という署名を求められる。任意なので署名しない自由もあるが、あの手この手で政治活動を妨害されるため、ほとんどの国会議員はこれに署名するという。
米国の政策は上下両院で議論する前にAIPACで決まっているのだ。これまた日米合同委員会と同じである。
AIPACの政策を貫く背骨は、米国によるイスラエル支援だ。援助の対象は軍事、世論、経済などあらゆる面にわたる。
駐日米国大使のラーム・エマニュエル氏はAIPACの中心的政治家で、少なくとも18歳まではイスラエルと米国の二重国籍を持っていた。現在は米国籍のみ。
ユダヤ系米国人のエマニュエル・パストリッチ氏(シンクタンク、アジア・インスティテュート理事=1964年生まれ)はAIPACの存在に強い危機感を示す。
ガザ戦争遂行は軍事産業と持ちつ持たれつであるAIPACの意思だからだ。
「AIPACの米国はガザ戦争をきっかけにイランに戦争を仕掛けたがっている。イランとの戦争は第3次世界大戦に発展する可能性を秘めている」。パストリッチ氏は指摘する。
「今やってることはイスラエルの自殺行為だ。『戦争はユダヤ人の責任だ』と言われて反ユダヤ主義が世界中に吹き荒れることになる。それだけは避けたい」。
「戦争が続けば米国にとっても将来はない」。パストリッチ氏は祖国の行方に強い危機感を示した。
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