東京23区の半分ほどの面積しかない狭い狭い地区に、中東一精強な軍隊が襲いかかり、雨あられのごとくミサイルや砲弾を浴びせる。
ガザは戦場ではない。イスラエル軍の屠殺場と化していた。
戦車と野戦砲からの砲撃は間断なくガザに撃ち込まれた。「ボン、ボン」。大気を圧縮するような音が耳をつんざく。砲弾は田中の頭上を飛んでいった。
ドローンは唸り声をあげるようにして上空を旋回し、戦闘機は金属音を立てて空を切り裂いた。
「ドーン、ドーン」。海からの艦砲射撃は大地を揺らすような重低音を立てた。
猛爆撃は陽が落ちても一向に止む気配がなかった。むしろ激しさを増した。
ガザ保健省によると住民の死者は7,703人にのぼる(28日現在)。死者が1万人を超えるのは時間の問題だ。
世界中の地獄を一堂に集めても、これ程おぞましくはなるまい。
ガザ地区ではイスラエル軍侵攻直後の27日から通信が途絶えている。電話もインターネットも接続不可だ。何が起きているのか、外界には伝わらない。ブラックボックス状態なのである。
イスラエル軍はいかなる蛮行を働こうとも闇に葬り去ることができるのだ。
田中が危惧していたように、住民5万人が避難していたガザ地区最大のアル・シーファ病院は、10~15回も爆撃に遭った。地元記者を置いていたBBCが伝えた。
ネタニヤフ首相は28日記者会見し、「戦争は第2段階に入った」と述べた。
海外メディアと契約する地元記者とて、この先生き延びられる可能性は低い。人知を超えた惨劇が発生しても、歴史に刻まれることがないのだろうか。
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田中は人類史に残る大虐殺が起きる恐れのあるガザを取材するためにパレスチナに来ております。
危険手当を伴うためにドライバーに日額1千ドル(約14万円)も払わなければなりません。
飛行機代、ホテル代ですでに借金まみれとなっており、そこに巨額の取材費がのしかかります。
連絡先:tanakaryusaku@gmail.com