巨大な再開発のために外苑の森を伐採する三井不動産の住民説明会が、きょう28日、地元の新宿区であった。
これまでの説明会は対象が外苑の境界線から380m以内の居住者に限られていたが、今回は地元町会の要望で開催されたため、圏外の住民も出席した。
業者以外は誰も不便を感じておらず、住民のほとんどはイジラナイでくれと言っているにもかかわらず、外苑がもっと素晴らしくなるかのような詭弁を羅列した三井不動産による説明が、冒頭40分間あった。これが譲るべからざる大方針であった。
50代の女性が「ここで私たちが質問、要望したことで変更してくれることはありうるのか?」と聞くと、三井不動産は「規模だとか用途だとかの大枠は決まっている。細かい点については検討してまいる」とあいまいに答えた。事実上突き放した感がある。
計画によれば一角に189mの超高層ビルが登場する。完成した頃(2036年)には人口減やリモートワークでオフィス需要が変わっている。
住民「ゴーストの超高層ビルで街自体が荒れてしまうので見直して頂けないか?」
三井「風の影響や昼間の人口など環境についても我々が評価を致しまして法律に基づいて報告してゆく」
住民 「CO2を吸収する大量の樹木をなぜ伐採し、CO2を大量に排出する高層ビルを建設するのか?」
「多くの住民の反対があってもイコモス本部の警告があっても、何が何でもこの計画は進めるのでしょうか?」
三井 「どうしても伐採する木は出てしまう。伐採した以上に木を植えまして、全体としての木の本数、全体としての緑の割合を増やしてゆく」
三井は増やすと主張するが、詭弁である。大木を切ってヒョロヒョロとした木をいくら植えたところで、CO2の吸収量が増えるものではない。ヒートアイランド現象の緩和にもならない。
イコモスについては答えなかった。
高層ビルからのCO2の排出量については外苑近くに住む大澤暁氏(未来の子どもたちの笑顔をつくる神宮外苑を考える会会長)が、前回7月の説明会で質問し、今回の説明会でも質問したが、三井側から回答はなかった。
住民たちは三井不動産への不信感を募らせ、回答に対しても「エーッ!?」を頻発した。
全国紙やNHKが取材に来ていたが、記者さんたちはお行儀よく外で待機した。昔の記者はナリスマシてでも会場に潜入したものだ。
田中は最初から最後まで説明会場で取材した。三井不動産と住民のやりとりをナマで見るべきと思ったからだ。
~終わり~
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