【パレスチナ発】分離壁 飛び越えても捕まるかどうかは御都合主義

飛び越える場所だけ高圧電線は切断されていた。=1日、西岸アルラム町 撮影:田中龍作=

 イスラエルとパレスチナの間を万里の長城のごとくして隔てる分離壁。パレスチナの人々にとってはアパルトヘイトの壁だ。イスラム教徒の聖地であっても、イスラエルの許可なくしては行けない。

 憎しみの壁はコンクリート製で高さ8m。その上を高圧電流が走る。

 ウエストバンク最南端のアルラム町を訪ねた。聖地アルアクサの丘までわずか10㎞だが、見上げるような壁が行く手を遮る。

 「上に政策あれば下に対策あり」。この壁を飛び越えるパレスチナの若者が1日、50人~100人もいる(公的機関調査員)のだそうだ。

 ハシゴとロープでよじ登って、イスラエル側に飛び降りるのである。高圧電流が走る電線は切断してある。

 イスラエル当局に捕まれば禁固6カ月と罰金4千~5千シェケル(約15万~約18万5千円)を課せられる。


第3次中東戦争(1967年)まではアラブ側の領土だった東エルサレムへの道はここで閉ざされる。=1日、西岸アルラム町 撮影:田中龍作=

 多くの若者が危険を冒してでも壁を飛び越えるのは、イスラエルで仕事(肉体労働)をして稼ぐためである。

 イスラエル当局も労働力欲しさで「不法侵入」を目こぼしする。

 アルアクサの丘への巡礼だったりすると容赦はない。礼拝のある金曜日やラマダン期間中は、越境(壁)者が多い。自ずと逮捕者が増える。

 壁を飛び越えずともイスラエル側には行ける。許可証を取って国境検問所(チェックポイント)を通過すればよい。

 だが社会活動家であったり逮捕歴があったりすると許可されない。

 生活していくには占領軍に従順であらねばならない。被占領地の冷厳な実態である。

「万里の長城」は行きつく先が見えないほど果てしなく続いていた。=1日、西岸アルラム町 撮影:田中龍作=

    ~終わり~

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