平和が薄氷の上に成り立っていることをあらためて考えさせられた一日だった。
パレスチナ最大の抵抗組織ファタハの集会が、29日、ヨルダン川西岸の中心都市ラマッラーであった。ファタハ設立66年周年を記念する集会である。
かつては武装強硬派だったファタハも今ではすっかり穏健派となった。
人々にとって穏健路線が本意だったかというと否である。ファタハの指導者であるアッバス・パレスチナ自治政府議長は「イスラエルの犬」と罵られるありさまだ。
とはいえイスラエルとの融和路線のお蔭でウエストバンクは、ガザのように本格的な軍事侵攻を受けることはない。生活用品などの物資はガザとは比較にならないほど豊かだ。
平穏な暮らしをぶち壊しかねない動きがイスラエル側に出てきた。狂信的宗教政党との連立政権が誕生したのである。29日夕(現地時間)、議会で正式承認された。
「アラブ人に死を」と叫ぶ人物が警察を束ねる治安担当相に就任し、入植地のリーダーが財務大臣に就いたのである。
あるパレスチナ住民(50代)は「(入植地建設によって)我々の土地は奪われ、これまで以上に殺されるようになるだろう」と深く憂い、「そうなればインティファーダで応える」と表情を引き締めた。
イスラエル新政権が弾圧を強めれば、パレスチナの民は当然対抗する。アッバス自治政府議長の制止なんぞ聞く耳を持たないだろう。
苛烈な武装闘争によりパレスチナ問題を世界に知らしめたアラファトPLO議長は今なお英雄である。
「汚職が酷かろうが、そんなことはどうでもいい」。ガザの友人もウエストバンクの知人も異口同音に答える。
大事なのは民族の誇りなのである。人々は銃を手にとり蜂起するだろう。第3次インティファーダの勃発である。
イスラエルとパレスチナが血で血を洗う争いを、またもや繰り広げることになる。
~終わり~