「ロシア軍が占領する原発にロシア軍が砲撃してくるだろうか?」・・・ザポリージャ原発施設に爆撃がある度に反米親露の論客たちが疑義を唱える。常識で考えればその通りだ。
ところがロシア軍の実態は違うようだ。侵攻初日(2月24日)、チェルノブイリ原発を占領したロシア軍は、常識では考えられない動きをした。
ロシア軍部隊はチェルノブイリ原発の北約2㎞の地点に塹壕を掘った。
そこは世界を震撼させた1986年の事故で高濃度の放射能が降り注ぎ、35年以上経った今も松が真っ赤に変色している森だ。コーディネーターはレッド・ジンジャー・フォレストと呼んで事情を説明してくれた。
塹壕堀りにあたった兵士たちは、当然のごとく高濃度の放射能を浴びた。ベラルーシの病院に搬送されたが、ほぼ全員が死亡したとも伝えられている。ロシアは自軍の兵士の生命を軽んじている、と批判されても致し方ない。
今も放射能を吐き続けるチェルノブイリ原発がすぐ目の前にあり、森が真っ赤に染まっていれば、何か変だと考えるのが常識なのだが。
ロシア側の常識が人間界の常識とは180度違うことを確信させられる出来事があった。
9月にIAEAがザポリージャ原発を査察した時のことだ。
施設内の地面に突き刺さっているミサイルを見たIAEAの査察官がロシアの広報担当者に質問した。ミサイルが突き刺さっている角度がロシア側の陣地から飛んできたことを示しているのではないか、と。
ロシア側の回答がふるっていた。「着地する直前にミサイルが180度向きを変えたのだ」と。
こうなるとコントの領域である。それでも反米親露の人士は「撃ってきたのはウクライナだ」と信じて疑わない。
西側の常識に慣れた頭でロシアの主張を考えると、ロシアのプロパガンダに引きずられる。純粋な人ほど影響される。
今やウクライナ情勢はプロパガンダと常識との戦争になっている。
~終わり~