これ以上人が死なないように、家屋が破壊されないように・・・市井の人々が「即時停戦」を願うのはもっともだし理解できる。
だが、国会議員や言論人が即時停戦を唱えれば、それは明らかに現実認識を欠く。国会議員に至っては国を危うくする。
かりに今、停戦合意すればドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソンの4州はロシア領として固定化する。プーチン大統領が併合を宣言した4州を手放すはずがないからである。
さらにロシアはこの4州から西に侵攻してくることが十分に懸念される。
なぜならドネツク、ルハンスクのロシア語話者をネオナチから解放する(これ自体プロパガンダだが)と称して軍事侵攻してきたはずなのに、ザポリージャとヘルソンまで兵を進めた。
ウクライナ軍の抗戦がなければ、ロシア軍は次から次へと西に侵攻してゆき、いずれキーウまで陥れるだろう。
ロシアによる最高のダマシとしてブダペスト覚書(1994年)がある。「ウクライナが核を放棄すれば、私たちはウクライナの安全を保障しますよ」という内容で、ロシアとイギリスとアメリカが署名した。
当時、世界第3位の核保有国だったウクライナは経済的事情もあって所有していた核をすべてロシアに渡した。
核を放棄した結果、どうなったかは言うまでもないだろう。
アメリカとイギリスは武器供与と資金援助で約束通りウクライナの安全を保障している。
ロシアはものの見事に覚書を反故にし、軍事侵攻した。明らかに騙し討ちである。
つい最近では開戦前、ラブロフ外相が「軍事侵攻はしない」と公言していたのだが、これもダマシだった。
ロシアはウソをつき約束を守らない、というのがウクライナ国民の共通認識だ。事実そうである。
あるIT技術者(30代)は「停戦合意すれば皆殺しにされるだけ。ロシア軍を追い出すまで戦い続けるしかない」と話す。
日本人は相手が嘘をつかないという前提で話を聞く。だから騙される。そして「即時停戦を」と唱え始める。
~終わり~