ドネツク州北部リマンの現場を見て、ロシア軍が致命傷一歩手前の深手を負ったことが改めて分かった。
「低出力の核兵器を使用すべき」。プーチン大統領の傀儡であるチェチェンのカディロフ首長が進言したのが頷けた。
ロシア軍の一大補給拠点スワトヴァがリマンの北東50㎞の地点にあるのだ。ウクライナ軍は1日、このリマンをロシア軍から奪還した。
リマンに先立って奪還したクーピャンスクから南東46㎞にスワトヴァがある。
ウクライナ軍はクーピャンスクとリマンを落としたことで、ロシア軍の一大補給拠点スワトヴァを南北から挟撃できる態勢が整ったのである。すでに進撃中である。
ただでさえ劣勢のロシア軍がスワトヴァを失うようなことになれば、ドンバスの戦線は壊滅的になる。
ロシア軍幹部が泡を食い焦りの色を濃くしたことは想像に難くない。カディロフの「低出力核」進言は出るべくして出たのである。
リマン警察のイーグル・オグシベンコ署長によれれば、ロシア軍によるリマン占領は4カ月余りに及んだ。住民の話とも付合する。
人口2万9千人(開戦前)の小さな都市リマンにロシア軍は5千名の兵力を投入したのである。
同署長は「今のところマスグレイブは見つかっていない」と話す。死傷者の数はまだ把握できていない、とも語った。
占領期間中、住民は飢えに晒された。医薬品も欠乏した。
5日、リマン市役所前でボランティア団体が食料を、赤十字が医薬品を配布した。長蛇の列ができた。前列に行くほど殺気だっている。
「並べよ」「後から来たくせに俺の先に行くなよ」…怒鳴り声が途切れることはなかった。
パンを手にしたヴァレンティノ婆ちゃん(写真・71歳)は、パンに口づけさえした。「ここ2週間以上は乾パンを水に浸し、ひまわり油と塩をかけて食べていた」。
田中が5日、足を踏み入れたドネツク州は、プーチン大統領が先月30日、併合を宣言し、ロシア領土となった地域だ。田中の取材行はビザなし渡航であり、不法入国である。
ウクライナ軍が奪還していなければ、田中はその場で拘束されていただろう。軍事力で分捕った地域は軍事力で取り返される。
先に侵略した方に正義はない。
~終わり~
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読者の皆様。
ロシアが国境付近で核実験を行うとの情報があります。
通常戦で勝てないことが分かり焦りの色を濃くするプーチン大統領が、大量破壊兵器を使用しても不思議はありません。
人知を超えるかもしれない戦争の行方を田中龍作に見届けさせて下さい。
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