開戦から24日目、3月19日。
義勇軍が入ったのか。それとも強力な兵器が欧米から届いたのか。ウクライナ軍が押し戻した。
2日前に来た時よりもウクライナ軍のフロントラインが北に移動した。「パン・パン・パン・パーン」…同軍の発砲する位置が200mくらい北上しているのである。
2日前のフロントラインは今よりも南側つまりキエフ市境間近の地点にあった。
イルピンは遠からず落ちる、と悲観した根拠でもあった。
ロシア軍は戦車からの砲撃で応戦していた。「ドン・ドン」くぐもった砲声は戦車特有のそれだ。
イルピンの入り口(住所はキエフ市)に時代劇に出てくる峠の茶屋のようなテントがある。
領土防衛隊の戦士、イルピンからの避難者、地元住民にコーヒー・紅茶や食料が振る舞われるのだ。無料である。
戦争で仕事ができないため、地元住民は食えなくなっている。炊き出しである。戦争は貧困の製造機なのだ。
「茶屋」を支えるのは地元の主婦たちだ。砲声と銃声が間断なく響くなか、彼女たちは顔色ひとつ変えず、お茶を入れたり食事を提供したりする。
「怖くないか?」と聞くと「怖くない。慣れているから」と笑顔で答えた。
イルピンに向かう途中、田中はウクライナ軍の基地に立ち寄った。これから前線に送り出される兵士たちの表情が、ぜんぜん暗くないのだ。
「オー・ジャパン」と言って田中にグータッチを求めてくる兵士もいるほどである。
広報官に「ロシア軍が首都に侵攻してきたらどう戦うか?」と質問した。広報官は「防衛線は3段になっている」と明かした。
上述したように防衛線の第一段目が持ちこたえている。
この戦争は先が見えない。「プーチン大統領が戦術核を落として終結」などということだけは避けてほしい。
~終わり~