開戦から23日目、3月18日。
連日、ロシア軍陣地の方角から砲撃があり、キエフの住宅地が破壊されている。18日の爆撃は格段の破壊力で、ウクライナ軍にも衝撃を与えた。
この日午前8時頃、首都中枢から直線距離にして7㎞の場所にある住宅地に爆撃があった。
6棟が全半壊した。5~6階建てのアパートは、立っていることは立っているが、壁は落ち、全世帯の窓ガラスは粉々に砕けた。
警察の発表によると死者1人、負傷者19名。死傷者が少ないのは、住民が地下シェルターで夜を過ごしているためだ。
田中は着弾地点に出来たクレーターが小さいのに驚いた。目測だが、直径3~4m、深さ2m弱しかない。
通常ミサイルの場合、直径10m以上、深さ5m以上の大きなクレーターができる。
ロシア軍は一体どんな兵器を使ったのだろうか。たった1発でしかも建物には直接命中せず、爆風だけでアパート6棟を全半壊させるのだ。爆風の凄まじさは想像を絶する。新型爆弾なのか。
この日、田中は軍の基地を訪ねることになっており、アポもしっかり取れていたが、今回の爆撃によりキャンセルとなった。
アリョーナさん(55歳)一家は、5階の角部屋に住んでいた。アパートの壁が吹き飛ばされたため、アリョーナさん宅は剝き出し状態だ。
アリョーナさんはこのアパートで生まれ育った―
「私の人生のすべて(55年)をここで過ごした。どこに帰ればいいのか。私たち一家はホームレスだ。恐ろしくて怯えている」。
アリョーナさんは目に涙をためながら声を震わせた。
アパートから20m北に幼稚園、西に小学校があり、両施設とも窓ガラスが割れるなどの被害が出た。
戦争は大量のホームレスを生む。寒空の下、どこで過ごせというのか。
~終わり~
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