開戦から21日目、3月16日。
大量の義勇兵が強力な兵器を携えて駆け付けない限り、イルピンは早晩ロシア軍の手に落ちる。
イルピンから南西の方角に約20㎞行けばキエフの中心部、さらに15㎞進むと大統領府、国会議事堂に行き着く。
キエフが陥落すれば、世界のメディアは「ロシア軍、ウクライナを制圧」と書き立てるだろう。
軍とキエフ市は首都が簡単に落ちないように、幹線道路の要塞化を着々と進めている。
定番のバリアーはコンクリートブロックだが、鉄橋でも持って来たかのような巨大な櫓が置かれていたりする。
交差点に路面電車が停まっているのは、電車の車体をバリアーにするためだ。電車に限らず、大型トラック、大型バスも道路を塞ぐようにして停まっている。
こうしたバリアーもロシア軍戦車の砲撃に遭えば、簡単に破壊される。
だが進撃を遅らせることで効果はある。迎撃する機会ができるのだ。幹線道路沿線にはビルが林立しており、高い所からいくらでも戦車を撃てる。戦車は上からの攻撃には脆い。
戦車は応戦して発砲する。ビルつまり民家は粉々に破壊される。火災も発生する。市街戦の地獄絵である。
マスコミ報道によれば、米国防総省の高官が「ロシア軍に目立った進撃はない」と明かしたそうだ。
軍事偵察衛星から見ればそうだろう。だが田中がイルピンの現場(地べた)で見る限り、最前線はキエフ市側に着実に近づいている。
戦争の第2幕は間もなく上がる。
~終わり~