国家反逆罪に問われていたポロシェンコ前大統領に対する判決公判があった19日―
ロシアの侵攻を危惧する米国のブリンケン国務長官がウクライナを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談した。
前大統領は、「パスポート没収の必要あり」「キエフから外に出る時は裁判所の許可が必要」などとする判決を言い渡されたが、逮捕は免れた。
判決後、地元ジャーナリストが前大統領に質問した。「ブリンケン米国務長官が来たから逮捕されなかったのか」と。
ポロシェンコ氏は「いいえ。司法は独立していますから」と答えた。あくまでも建前に過ぎない。
氏は「ゼレンスキー(現)大統領はブリンケン国務長官から『強い言葉』を言われたはずだ」と続けた。『強い言葉』とは叱られたという意味だ。
ブリンケン国務長官が来なければ、ポロシェンコ氏は逮捕されていた可能性が強い。
12時間に及んだ17日の公判で、ポロシェンコ最側近のオレクサンダー・トゥルチノフ氏が「やばい。もっと人を集めてくれ」と配下の者に指示を出しているのを、田中の通訳が傍受しているのだ。
トゥルチノフ氏は秘密警察の元長官。権力のやり口を知り尽くしている。
すでに支持者数千人が裁判所前に集まり抗議の声をあげ続けていたが、人が増えれば簡単に逮捕できなくなるだろうというのが氏の目論みだった。
逮捕・収監されなかったとはいえ、あまりに政治的な裁判だった。
エネルギーがひっ迫するなか親露勢力の支配地域となったドンバス地方(ドネツク州・ルガンスク州)の石炭を、ポロシェンコ政権が購入したというのが、国家反逆罪にあたるというのだ。
あまりに馬鹿馬鹿しい。両州とも法的にはウクライナの領土である。電力が不足したため石炭で発電せざるを得なかったのである。
ポロシェンコ氏の支持者たちは、裁判はゼレンスキー現大統領側が仕掛けたとの見方を強める。
判決後、彼らは大統領府に向けてデモを掛けた。玄関のわずか20~30メートル手前まで迫った。日本では考えられないことだ。
ロシア侵攻前夜でなければ、ブリンケン国務長官は駆け付けなかっただろう。
欧米とロシアのはざまで揺れるウクライナらしい裁判結果だった。
前大統領逮捕の場合、支持者たちは独立広場(マイダン)を占拠する大掛かりなデモを仕掛ける予定だった。
政権転覆につながったマイダンの騒乱(2014年)は、再現されなかった。米国の介入により間一髪回避された。
~終わり~