JOC経理部長は闇の中で死んでいった 赤木俊夫さんの自死より固い箝口令

森谷経理部長はどんな気持ちでホームを歩いていたのだろうか。オリンピックさえなければ命を落とす必要はなかった。=11日、都営地下鉄中延駅 撮影:田中龍作=

 JOC経理部長の森谷靖さん(享年52歳)が7日、都営地下鉄浅草線の中延駅ホームで走ってきた電車に飛び込んだとされる報道。

 都営地下鉄職員によると、駅の防犯カメラが記録していた映像は、警察がコピーを持って帰った。警察は自殺の場合でも映像を持って帰ることがあるというから、「他殺説」の決め手にはならない。

 経理部長の妻と娘は中延駅のホームまで行って現場を見た。遺体とも対面している。

 スポーツ新聞は山下JOC会長の話として「2人(妻・娘)は「自殺ではない」と思われている」と伝えた。

 遺族に会って話を聞くのが事件取材の常道だが、オリンピックの前に常識は通用しないようだ。

 知己の新聞記者から昨日(10日)夜、ショートメッセージが届いた。「遺族を訪ねてはならないと会社からキツく言われた」と。

 友人の週刊誌記者によると、JOCがマスコミ各社に「経理部長の家を訪ねたりしないよう」要請したという。

 JOCは職員に対してもかん口令を敷いた。警察にも手を回していないはずはない。

クーベルタン男爵はオリンピックのために多くの人々の命と生活が犠牲になることを予想していただろうか。=10日、JOC前 撮影:田中龍作=

 警察の方でも官邸にお伺いを立てているはずだ。時節柄扱いを間違えば、署長のクビくらい簡単に飛ぶ案件だからだ。

 森友学園事件で公文書の改ざんを命じられ自殺に追い込まれた近畿財務局の赤木俊夫さんの場合、現住所、実家の住所などが少しずつ漏れてきていた。遺族の話を聞くことで事件の闇に迫ることができた。だがJOCの場合それも困難だ。

 今回の事件で仮に信頼関係のある辣腕刑事が捜査に関わっていたとする。夜回り取材で真相に迫るような情報が得られたとしても、新聞テレビで報道するのは不可能だ。五輪案件だからである。

 辣腕刑事が週刊誌の記者やフリーランスの記者に真相を話すだろうか。話すとしても奇跡に近いようなレアだ。新聞記者当時の付き合いが未だに続いていたとしても。

 ウソとワイロで誘致し、コロナ禍の中で強行開催する。オリンピックの深い闇を抱えたまま経理部長は冥府へと旅立った。

 自殺なのか、事故死なのか、他殺なのか。永遠に解明されることはない。

     ~終わり~
 
  ◇
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