原発の再稼働と同じ図式だった—
東京外環道のトンネル工事に伴い、調布市の住宅地で道路が陥没したり地下に巨大な空洞が見つかったりした事故。原因を調べていた有識者会議が、きょう19日、最終報告書をまとめた。
事故発生の経緯や陥没・空洞のメカニズム、再発防止策などを、A3版で100ページ以上にわたって報告している。
同日、NEXCO(東日本高速道路)東京外環道工事事務所で最終報告書に関する記者会見があった。記者たちは膨大な資料を会見場に入室して初めて目にする。入室は記者会見が始まる5分前ときている。
有識者会議の小泉淳委員長は「これで一区切りついた」とし「(空洞などには)セメントを注入するので(地盤が)強化される」と言い放った。
ネットのライブで記者会見を視聴していた「外環被害住民連絡会・調布」の滝上広水・共同代表は「科学者の発言とは思えない。住民をバカにしている」と憤った。
今回の事故で問い直されているのが大深度法(=大深度地下の公共的使用に関する特別措置法)である。
同法の適用を受けると、地下40メートルより深い場所での工事であれば、地上権者の同意は要らないのである。
ところが今回は地上に被害が出た。家屋にはヒビが入り、健康を害する住民も現れた。
あるフリ―ジャーナリストが「地上の人間の被害が報告されていないではないか?」「大深度法自体が間違っているのではないか?」と問うた。
この日の会見で、小泉委員長は「ゼロリスクはない」「それ(ゼロリスク)を言ったらすべての工事ができなくなる」と語った。噴飯ものである。
ずさんな工事を認めるようなものではないか。有識者会議など必要ないということである。語るに落ちたと言えばそれまでだが。
工事再開の時期が焦点となっている。「工事の2年凍結」が一部の報道にあった。
NEXCO東日本関東支社・建設事業部の加藤健治部長はこれを否定してみせた。
加藤部長は「補修を最優先する」と繰り返した。田中が「では、補修が完璧に済むまでは、工事を再開しないのか?」と問うと「それはお答えできない」とかわした。
肝心の補償交渉について、加藤部長は「個別に交渉したい」との方針を崩さなかった。「個別の方が住民に寄り添うことになる」と理由を示した。
個別の方が切り崩しやすいだけ、である。見え透いていた。
住民連絡会の滝上共同代表は「住民感情を逆なでする発言だ。怒りを覚える」と語気を強めた。
被害住民が郷原弁護団を結成したことについて問われると、加藤部長は「郷原(信郎)弁護士がどんな話をしたかは知らない」と突っぱねた。
郷原弁護士は東大で地質学を専攻していた。今回の事件にはうってつけだ。NEXCO側がそれを知らないはずがない。
電力会社の背後に経産省がいるようにNEXCOには国土交通省が控える。国策事業である。
原発再稼働ありきは、外環道工事再開、リニア新幹線建設ありきと重なる。
~終わり~
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