オリンピックは誰のためにあるのかを象徴したような光景が広がっていた。
かつて都営住宅のあった敷地が「オリンピックスタジアムTVスタジオ」となっていたのである。
オリンピックが強行開催された場合、放映権を持つテレビ局が現地スタジオとして使用することになる。
旧国立競技場の南隣には都立明治公園があり、さらにその南隣に都営霞ヶ丘住宅(10棟・約400世帯)があった。
2012年8月、住民は東京都の説明会のため近くの日本青年館に集められた。
都は「オリンピックとラグビーワールドカップの開催で国立競技場を大きくしなければならない」と説明し「皆さんは移転して下さい」と言い放った。(オリンピック招致決定は2013年9月)
実は説明会の1ヵ月前に霞ヶ丘住宅の取り壊しはすでに決まっていた。同年7月に新国立競技場のコンペが開催された際、霞ヶ丘住宅は再開発エリアにすでに含まれていたのである。(住民説明会は8月)。住民は蔑ろにされたのだ。
東京都建設局公園緑地部によると現在「オリンピックスタジアムTVスタジオ」となっている土地(元都営霞ヶ丘住宅)は、今なお都有地で、都が「オリパラ組織委員会」に無償で貸しているという。
東京都民が税金で賄っている土地である。テレビ局がオリンピックで儲けるために税金を払っているのではない。
報道機関を「売り」にするテレビ局が、一時的とはいえ都民を追い出した跡地で営業するのである。
~終わり~
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