パルチザンとして国境マルトゥーニの戦線に就いていたカレン氏(43歳)。アゼルバイジャン軍のドローン攻撃により左腕を3ヶ所にわたって切断された。
「ドローンが空から攻撃してきて私の腕を切っていったよ」。カレン氏は腕が削ぎ落されるジャスチャーを交えながら話した。
ドローンが落とした爆弾やミサイルが爆発してカレン氏の腕を切断したのではない。鋭利な刃物が氏の腕を切ったのである。体の他の部位はまったく無傷であることが何よりの証拠だ。
ドローンが落としたのは『ニンジャボムR9X』と呼ばれる新型精密誘導兵器ではないかと見られる。
R9Xは米軍などが開発した空対地ミサイル弾頭。爆薬は詰められていないが、代わりに着弾直前に6枚の刃が出て特定の人間だけを切り裂くという。
爆撃による巻き添えを防ぐために開発されたというが、精密攻撃はますます進化しているようだ。
前出のカレン氏は「ドローンに狙われたらどこにいても殺(や)られるよ」と自虐的に言った。
アゼルバイジャン軍が使用していたドローンはイスラエル製だが、イスラエル製のドローンが米製ミサイルを投下するのは、よくあるケースだ。
戦争中、ステパノケルト公立病院には、一日約100人もの負傷者が救急搬送されて来た。軍兵士やパルチザンだけでなく市民も重傷を負った。
手術に立ち会った看護師は「最も多かったのがドローンによる負傷」と指摘する。
手足を失った状態で運び込まれてくるという。体の他の部位が傷ついていないのが特徴だ。上述したカレン氏もそうだった。
ドローンは遠隔操作で精密誘導弾を落とす。ハイテクの塊で、一見スマートに思えるが、非人道的で血なまぐさい兵器であることを認識させられた。
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