「スガ政権による学術会議への人事介入」に抗議する菅野完の官邸前でのハンストは11日目となった。
きょう12日、官邸前では市民団体の抗議集会(主催:アベ政治にモノ申す会)があった。菅野は初めてゲストとして呼ばれ演説をした。
「87年前(滝川事件※)、我々の先輩が出来たこと、海の向こうで我々の兄弟がやっていること(BLM=ブラック・ライブズ・マター)を我々が出来なかったら、申し訳立たないじゃありませんか」。
絶食中で腹は空っぽのはずなのに、よく通る声で、菅野は参加者に向かって語り掛けた。
菅野に演説を依頼した理由を主催者の一人に尋ねた。「もちろん共感しているからですよ」という答えが返ってきた。
これまで護憲団体などが官邸前で人事介入への抗議集会を開いてきたが、菅野に演説を依頼するどころか、無視し続けてきた。
ハンストに共鳴して官邸前にスタンディングに訪れる人は後を絶たない。「続けることに意義がある」ということか。
市民団体の抗議集会に先立つこと2時間位前だった。ジャーナリストの清水潔がハンストの現場を訪ねてきた。
清水は「そのうち止めるだろうと思ってたけど、止めないので来た」と切り出した。
「皆が知らん顔しているなか、ここまでやるのは大変なこと。死なないでほしい」。清水の目は赤くなっていた。
菅野は頷きながら耳を傾けた。清水が話し終えると、自分がハンストを続ける意義を語った。
「首相が法律を破った。他の国にもあるだろうが、『それがどうした』と開き直る国は今の日本しかない。後世に申し訳が立たない」と。
菅野は「ポイント・オブ・ノー・リターン」という言葉を折に触れ口にする。今を許したら歴史が破滅に向かうという意味だ(直訳すれば後戻りできない地点)。
第2次安倍政権(2012年末)以後、秘密保護法、戦争法、共謀罪、労働者派遣法などが数の力で押し切られてきた。
安倍政権よりもっと怖いスガ政権が、第一弾として繰り出してきた人事介入を見過ごせば、この国の民主主義は早晩根こそぎにされる。
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滝川事件(1933年=昭和8年):
京大法学部の滝川幸辰教授の学説や講演内容が危険思想であるとして、文部省により免官された事件である。京大法学部の全教官が辞表を出し、法学部の学生全員が退学届けを提出した。
~終わり~