菅野完の朝は早い。いつもは5時起きなのだが「けさは寒くて3時半に目が覚めた」。
「あそこに居続けることが、あいつら(菅政権)への最大の嫌味になる」と言って、官邸前の定位置(厳密には国会記者会館前)で寝起きする。
スガ首相の動向もその目でチェックする。「パンケーキおじさん」は毎朝7時30分頃、官邸を出て近くのホテルに朝食に向かう。
「スガは9時頃、(官邸に)帰って来ますよ」「旗を持った機動隊が外に出てきて、SPが立ったらスガが帰って来ますからね」。
現場で見ていたら、実際、菅野の言った通りになった。
「学術会議への人事介入」に抗議するハンストは、きょう15日午前7時で300時間を超えた。
テントでハンストしても限界を超える時間なのに、菅野の場合は夜露を浴びながらである。肉体はきしんでいるはずだ。
朝の日課は7時45分に始まる。内閣府に出勤してくる役人たちに声掛けするのである。
「全体の奉仕者の皆さん、お早うございます。不偏不党の職務執行をお願い致します」
「公務員倫理規定に基づいた職務執行をお願い致します」
「日本国憲法に忠実な職務執行をお願い致します」。
スガ政権の実働部隊である役人には、いずれのフレーズも耳に痛いはずだ。嫌味にさえ聞こえた。
だが、役人たちは下を向いたまま通り過ぎる。まったく意に介さないのか、目もくれずに足早に行く。
以上が第一陣。午前8時頃には一段落する。
第二陣は10時前にやってくる。皆、スーツ姿がパリッとしている。高級品という意味ではない。ズボンの折り目がキレイに通り、ワイシャツもパリっとノリが効いている。
キャリア官僚だろうか。彼らの反応は第一陣と同じく冷淡だった。
一群の中に「OKマーク」を指で作り「頑張ってね」と菅野に向けて声を掛けた男性がいた。
ご主人様に知られたら大変なことになるぞ…気になった田中は男性の後を追った。男性は内閣府庁舎には入らず、六本木通りを渡って溜池の方に向かおうとしていた。
田中は念のために男性に尋ねた。「民間の方なのですね?」と。男性は「そうです」と にこやか に答えた。
すでに自分たちの人事に介入されている役人たちにとって「学術会議」は、驚くような問題ではない、ということか。
~終わり~
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