文・竹内栄子
憲法記念日の3日、「今こそ、憲法改正の発議を!」というタイトルのもと改憲派の集会が都内で行われた。
ホームぺージの事前申し込みには「満員札止め」表示が出、主催者発表で1200人が参加した。テレビカメラ10台、記者席もいっぱい。ますます気勢が上がるかのように見えた。
昨年の集会で披露された安倍首相のビデオメッセージでは、「9条に自衛隊明記」「2020年までに改憲」という目標が発表された。するとマスコミも政界も、5月3日を境に一気に安倍首相が唱える加憲論議に鞍替えしたのである。
ところが今年は開会前から様相が異なっていた。プレス用に配られた今年の安倍首相ビデオメッセージ原稿を見た記者席から声が上がった。「2020年までに改憲」という文字が消えていたのだ。
国会議員の数も少なかった。松原仁議員ら、野党系常連の姿も消えていた。希望の党がなくなることになった中山恭子議員などは、プログラムに名前が挙げられていたにも拘わらず姿を見せなかった。
主催者は各界各党からの意見として、経団連や青年会議所、労働界などからの挨拶を求めたのだが、どうもおかしい。改憲の意義より、野党やマスコミへの批判が目立つ。曰く、国会審議に応じない、モリカケばかりだ・・・
女性・若者・沖縄出身として意見を述べたのは我那覇真子氏だ。のっけから「日本を取り巻く嵐が安倍政権を潰そうとしている」と語り、「サヨク・野党・反日マスコミ」を非難した。
可憐な外見に とつとつ とした口調。彼女からは安倍政権でなければ改憲できない、という危機感がにじみ出ていた。だがそこから吐き出されるのは「反日」というヘイトまがいの苛烈な言葉だ。そこそこの品位を持つべき憲法問題を論じる場が、一気にネトウヨ集会になったかのように感じられた。
自民党は結党以来、憲法改正を党是に掲げる。憲法改正草案もすでに世に問うた。いっぽう安倍政権がスキャンダルまみれなことは内外に知れ渡っている。クリーンな総理総裁の下で仕切り直しをしたらよいものを、なぜ安倍首相でなければ改憲できないと思い込むのだろうか。
改憲派が根拠に挙げる北朝鮮の脅威は減りつつある。改憲しなくても戦争ができるよう法整備をしたのは自公政権である。安倍首相の支持率が低下したからといって不可能になるような改憲など本当に必要であるわけがない。
自民党の細田博之・憲法改正推進本部長の顔色はさえなかった。公明党の遠山清彦・憲法調査会事務局長は「国民投票で否決されることは避けなければ。改正発議をするなら国民の圧倒的多数で可決されることが望ましい」とクギを刺した。
~終わり~