バングラの有力英字紙the Daily Star と the Daily Observer は政府高官の話として「ロヒンギャ難民強制送還の開始は遅れる」との見通しを示した。ただ遅延が確定したわけではない。
かりにミャンマーの触れ込み通り23日に強制送還を開始するにしても、バングラ側に無理がある。
バングラ側のトランジット・キャンプがまだ建設されていないのである。きょう田中は、トランジット・キャンプが建設されるとしたらここしかない、とされる島を地元記者と共に訪ねた。
ミャンマー、バングラ国境を流れるナフ川に浮かぶシャープリル・ドウィップ島である。
島はバングラ側からボートで約20分。ミャンマー側からも同じ位の距離だ。肉眼でミャンマー川岸の家屋がはっきりと見える。
ミャンマーを脱出したほとんどのロヒンギャは、この島を経由してバングラ本土にたどり着く。島は南北1㎞、東西に0・5㎞と細長く、人口1万人。
強制送還はコースの逆を行く訳だ。バングラ政府は常々「川から帰す」と国内メディアに答えてきた。(ミャンマー政府は「陸路」としている)
本土から隔絶した島は、ロヒンギャ難民を一刻も早く帰したいバングラ政府にとっても好都合だ。
だが、島にはトランジット・キャンプが建設される気配はない。島で生まれ島で育った商店主に聞くと「聞いてもいない」。島の隅々までを走る自転車タクシーのドライバーも首を横に振る。
ただ、島の漁師によれば、バングラ政府はボート業者に「(難民送還用に)ボートの準備をしておくように」と依頼した、という。
トランジット・キャンプなしの強制帰還もここに来て浮上してきた。
地元記者によると、バングラ軍はきょう、ロヒンギャ難民キャンプのリーダーに「日没後は外に出ないように」と おふれ を出した。夜間外出禁止令である。
23日の強制送還開始が遅れたとしても、緊迫した情勢は続く。
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