鳥越候補はマグロ仲卸業者（左）の訴えを聞きながら場外市場を歩いた。=29日、築地 撮影：筆者=
築地移転問題は魔物だ。自民党東京都連のドン、内田茂氏をも選挙で落選させたほどである。
中国産の食品から有毒物質が発見されるなどして、2009年の東京都議会議員選挙は「食の安全」が争点の一つとなった。
民主党（当時の名称）は「築地市場の移転に民主党はNO！ 自民党はYES」をマニフェストに掲げて都議選を戦った。鳩山由紀夫代表が築地の交差点で第一声をあげたほどである。
築地の仲卸業者たちが、落選させようと狙いを定めたのは都議会自民党のドンである内田茂幹事長だった。
「築地移転反対」のTシャツにゴム長姿の仲卸業者たちは内田氏の地元である千代田区（築地は中央区）まで出かけて「民主党は築地移転にNO！ 自民党はYES」と訴えた。
民主党への追い風もあったが、仲卸業者たちの活躍もあり、内田幹事長は民主党の超若手（26歳）候補に敗れる。都議選は民主大勝、自民惨敗となった。内田幹事長の落選は、事態を象徴していた。
築地移転に反対して大勝したはずの民主党だったが、2012年の3月議会で一転「賛成」に回る。見事なまでの裏切りである。
仲卸業者らから豊洲市場の危険性について説明を受ける鳥越候補。左から2人目が初鹿議員。=29日、築地 撮影：筆者=
築地移転は銀座に隣り合う広大な敷地（23ヘクタール）の再開発を伴う。巨大利権である。民主党の裏切りはさまざまな憶測を呼んだ。
以降、築地の仲卸業者たちが抱く民主党（現・民進党）への不信感は根強い。
きょう鳥越俊太郎・都知事候補が築地市場を訪れ仲卸業者たちと懇談した。
業者たちからは「11月7日の豊洲移転は延期してほしい」「豊洲の土壌には環境基準を大幅に上回る毒性があり、魚を扱える所ではない」などとする意見が出た。
懇談後のぶら下がり会見で鳥越候補は「（都知事になったら）延期を考えることもある」と述べるに留まった。
宇都宮健児氏が出馬を取り止めた直後から仲卸業者は鳥越陣営に築地視察を要請していた。だが上述したように移転賛成に回った民主党都連の意向を反映して、築地入りは実現していなかった。
鳥越候補の築地訪問実現には、初鹿博明衆院議員の尽力があった。仲卸業者たちは「今度の総選挙では初鹿さんを応援しないとね」と声を揃える。
宇都宮健児氏が第一声をあげるはずだったのが築地だ。懇談の最後に仲卸業者たちが鳥越候補に「明日（30日）は宇都宮さんと一緒に街宣に来て下さい」と呼びかけた。セリでしゃがれた声は合唱となった。
仲卸業者と築地移転反対の市民はプラカードを手に鳥越候補の街宣に駆け付けた。=24日、銀座 撮影：筆者=
～終わり～