中国全人代が押し付けようとする選挙制度に反対するデモの最大拠点、政府本部庁舎前。‘Freedom is not free’手製のプラカードを持って座り込む男性(30代・会社員)がいた。
フレーズの意味を問うと、「自由を得るのには苦労がいるんだ」と男性は答えた。同行の女性は問わず語りに「選挙制度の次は表現の自由が規制される」と話す。
日本の新聞・テレビでは、香港の学生運動であるかのように報道されているが、デモを支えているのは労働者や普通の市民だ。
それが最も顕著だったのが、モンコックでの騒乱だった。3日、暴力団組員を含む(※)「ならず者」がデモ拠点を潰しに来たところ、SNSやマスコミ報道で知った市民が、デモを守るために駆けつけた。市民の数は1万人を下らなかった。
一対一では「ならず者」たちにかないっこないが、1万人で「ならず者」を1人ずつ つまみ出した。デモ拠点は守られた。
「選挙制度の次は表現の自由が規制される」
梁振英行政長官が6日にもデモ隊を強制排除するとの姿勢を示したため、事態は緊迫した。
最大拠点の政府庁舎前は、危機感を抱く人々が前夜から詰めかけた。1万人をゆうに上回る市民が路上で夜を明かした。
これだけの人数がいると警察は負傷者の発生を恐れて、手荒なことができない。ここでも市民がデモ拠点を守った。香港市民は弾圧を何より嫌うようだ。
彼女は学校の事情を次のように話す―
「生徒たちは誘い合って毎日、ここに来ている。みんな香港の将来を心配している。最も恐ろしいのは、北京が選挙制度の次に表現の自由を規制してくること」。
政府庁舎、人民解放軍・香港部隊基地前には確かに高校生の姿が目立つ。
中国本土では、ネット上で香港のデモが閲覧できないようになっている。そもそも中国には政府を批判する自由はない。
表現の自由と普通選挙は、西側の常識では基本的人権に関わる。1997年まで英国領だった香港では、その常識が根づいているのだ。
ひるがえって日本はどうだろう。国民の知る権利を奪う「特定秘密保護法」が、12月10日に施行されることが確実になった。
秘密保護法は、国連人権委員会からも「人権上問題がある」と指摘された、恐ろしい法律だ。
私たちは基本的人権が脅かされることへの危機感を香港市民ほど抱いているだろうか。
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警察発表によると逮捕者19人のうち8人が暴力団組員だった。