「政府が前面に出る」といいながら決め手が見つからない東電福島第一原発からの放射能汚染水問題。きょう国会内で環境団体などが政府を追及した。福島県の漁師も参加した。
いわき市漁協久之浜支所の新妻竹彦さんだ。新妻さんは挨拶に立ち、怒りを政府にぶつけた―
「田中委員長はALPS(多核種除去装置)を通って基準値以下になったものは海に投棄してもいいのではと話しているが、こんなことをしたらガラス細工を組み立てるようにしてきた福島の試験操業は水の泡です。若い漁師のためにもこれ以上の汚染水の海洋投棄を止めて下さい」。
政府側は資源エネルギー庁、原子力規制庁、水産庁から6人の若手官僚が出席した。向こう3年は安定政権を続ける安倍政権とそれを支える東電への配慮からだろうか。官僚たちは環境団体からの質問に対して何ひとつ明確に答えなかった―
建屋底部の破損は?
エネ庁「東電が分からないと言っている」。
タンクから漏えいした汚染水の海洋への流出は?
規制庁「モニタリングを見る限り有為な上昇は見られていない」。
T1放出口から流出している汚染水の濃度は?
規制庁「検討しているところ」。
安倍首相の言うようにブロックされているのか? 説明して下さい?
エネ庁、規制庁「総理のご発言ですので…」
潮の満ち引きで港湾に海水が出たり入ったりすることは、海辺の小学生でも知っていることだ。さらに5、6号機の取水、排水で大量の海水が入れ替わっている。規制庁の役人がこれを知らないはずはない。
魚介類中のストロンチウムはどう把握しているのか?
水産庁「基準値は厚労省が所管しているものですから…」
いわき漁師「検体を増やしてくれないと先に進めない。水産庁は東電の前に出てくれない…?」
水産庁「出荷制限の解除は私どもも加わる」と話をそらす。
溶接型タンクへの移送は?
エネ庁「東電が加速することを検討しているので」
タンクの移送はいつまでか、期限を区切ってもらえるか?
エネ庁「私どもが答える立場にないので」
規制庁は「(汚染水の)海への放出は関係省庁の了解が必要」といいながら、「台風時の放出は雨水だから了解は必要ない」と答えた。汚染水に雨水が加わって溢れ出たから問題なのではないだろうか。
いわき市の漁師、新妻さんが再び重い指摘をした。「(地下水が建屋に行く前に)井戸を掘ってバイパス工事をし地下水を海に投棄するという計画があるが、『福一から出た水はすべて汚染水』というのが俺ら漁業者の認識」。
地下水を海側の遮水壁で止めたため、汚染水は建屋よりも内陸の方に広がった、と見られている。新妻漁師の指摘はもっともなのである。規制庁やエネ庁の官僚はうなだれるばかりだった。
「汚染水対策の国の責任者は誰か?」と質問されたが、官僚たちは「廃炉は経産大臣…」などと関係のないことを答えるばかりだった。
「汚染水対策の国の責任者は誰なのか?」、結局明らかにされないままだった。これこそが汚染水問題が解決に向かわない最大の理由ではないだろうか。責任者を明確にしない限り、汚染水流出は野放しのままだ。