この上なく危険な穀潰しに厳しい御沙汰が下された。穀潰しとは巨額な国費を無駄食いしながらほとんど発電せず、事故を繰り返す「もんじゅ」のことだ。
約1万点にのぼる部品の点検漏れが見つかった高速増殖炉「もんじゅ」。原子力規制庁はきょう、もんじゅを管理する日本原子力研究開発機構(JAEA)の幹部を呼び、運転再開に向けた準備さえも行ってはならないとする命令書を手渡した。原子炉等規制法に基づく措置だ。
同規制庁の桜田道夫審議官はJAEAの辻倉米蔵・理事長に命令書を読み上げ、「規制庁としてはJAEAの取組みを監視してゆく。来月査察に入る」と述べた。
辻倉副理事長は殊勝な表情で「(命令を)真摯に受け止め機構をあげて対応してゆく」と型通りに答えた。
もんじゅは原子炉を運転しながら燃料となるプルトニウムを新たに作り出す。
使用済み核燃料に含まれるプルトニウムを使用し、その消費量以上のプルトニウムを生成するのである。ウラン資源に乏しい日本にあって「夢の高速増殖炉」ともてはやされた。
しかし95年、試験運転中にナトリウム漏れ事故を起こし、2010年には炉内中継装置が落下する事故を起こした。1兆810億円(※)もの巨費を投じていながら、1991年の運転開始以来、発電らしい発電はしていない。
95年の事故では、記録ビデオに漏えい箇所が写されていなかった。動燃(当時の運営会社)は「漏えい規模が想像以上に大きかったことから意図的にカットした」と認めた。記録ビデオ改ざんの社内調査にあたった職員が謎の自殺を遂げる事件まで起きている。(国立国会図書館・調査と情報 781号より)
筆者は上述のトラブルを挙げたうえで辻倉副理事長に「この期に及んでまだ未練たらしくもんじゅ を動かしたいか?」と質問した。
辻倉副理事長は「もんじゅ 開発の意義は変わるものではない」「新理事長のリーダーシップのもと今後も開発に取り組んで行きたい」と突っぱねた。
記者団から具体的な改善策を訪ねられると副理事長は「新理事長のもと…」を繰り返した。
先発国の米国、英国、フランス、ドイツは高速増殖炉計画からすでに撤退している。経費の無駄遣いと技術的に無理だからだ。
今年度中の運転再開が不可能であることは、辻倉副理事長も認めている。動かなくても1日につき5,500万円の維持費が無駄使いされる。政府はいつまで危険この上ない穀潰しを維持し続けるのだろうか?
(※)1兆810億円
Wikipediaより