経産省の敷地に立つ「脱原発テント」の立ち退きを求めて国が提訴したことは、今週初め、記者クラブ発のニュースとして紙面やテレビ画面を賑わした。
これに対してテント側が国を相手どり「原発政策の過ち」と「テント存続」を訴えて裁判を起こすことになった。
原発をめぐっては住民が電力会社を相手どり「運転差し止め」を求める訴えを起こしたことがあるが、国と市民が裁判をかけ合うのは異例だ。
国(法務省)は3月29日付けで「脱原発テント」共同代表の正清太一氏と渕上太郎氏に「国有地からテントを撤去するよう」求める訴えを東京地裁に起こした。国有地の無断使用にあたるというのである。
国はさらに無断使用の損害賠償として1,100万円余りを支払うよう正清氏と渕上氏に求めている。
両代表をはじめテントを守ってきたメンバー、福島出身者、支援の市民らはきょう午後、テント前で記者会見を開いた。
渕上代表は国を相手取る意義を次のように話した―
「(原発事故とその後の対応に対して私たちは)声をあげて抗議しなければならない。事業者(電力会社)の体質、監督官庁の隠ぺい体質。これを告発しようとして私はここに留まって戦ってきた。民主主義の根拠としてテントがある」。
代理人の大口昭彦弁護士は「国民主権という憲法の大原則にのっとり原発政策にもの申す」と説明した。
国が正清氏と渕上氏のわずか2人に対して「1,100万円もの損害賠償を払うよう」求めたことについては、SLAPPではないかとの指摘がある。
「ここにテントがあっても損害は生じていない。威嚇以外の何ものでもない。威嚇し抑え込もうという意図がありありだ。そういう意味ではSLAPPだ」。大口弁護士は言い切った。
国が2人の市民を相手にSLAPPをかける。東電福島第一原発の貯水池から放射能汚染水がダダ漏れしているのに、再稼働に向けた安全基準作りを急ぐ。
両者の構図は同じだ。国民よりも原発を守ろうとする国の意図が見えるのである。
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相棒の諏訪都記者は、通訳で海外渡航しているため7月半ばまでお休みします。