東電のドタバタ劇は見ていて背筋が寒くなる。地下貯水槽から汚染水の漏出事故が相次ぐ福島第一原発で、2号水槽から1号水槽に汚染水を移したところ、今度はその1号水槽から汚染水が漏れ出した。
そもそも地下水槽は、地上のタンクでは日量400トンも出る汚染水に対応できないため、急ごしらえした代物だ。それが水漏れを始めたわけで、汚染水は行き場を失いつつある、と言える。
水漏れしたタンクに入ったままの汚染水は、着実に環境中に漏れている。
きょう午後、緊急記者会見した東電の尾野昌之・原子力立地本部長代理は「地下水槽から(汚染)水を引き上げた場合、地上タンクでは足りない」と認めた。
「海に投棄するつもりか?」と非記者クラブの記者に聞かれると、尾野本部長代理は苦し紛れに「移送先の目算をつけているところ」とかわした。
~目的外使用タンクに入れても満杯まであと107日~
記者団は「それはどこか?」と問い詰め続けた。しばらくして、広報部からメモが差し入れられると尾野本部長代理は「RO(逆浸透膜)処理水貯槽、ろ過水タンク」などと言い始めた。
これらは他の目的で使用される水槽やタンクだ。目的外使用という無理をしても空き容量は合計で2万1,900トンしかない。単純計算で約55日しかもたないことになる。
焦りの色を濃くする東電はあろうことか、地下貯水槽の5、6、7号水槽を持ち出してきた。これらは水漏れしている1、2、3号水槽と同じ構造なのである。また漏れ出すだろう。
目的外使用タンクと地下水槽5,6,7号を合わせても4万3,000トンしかない。処理水約107日分だ。廃炉までの40年間、増え続ける処理水をどうするのだろうか?
「タンクの竣工を急いでいるが、劇的に早くなるものではない」。尾野本部長代理は対策が後手後手に回っていることを認めた。
最悪のシナリオが現実のものとならないことを祈るのみだ。