我が子を認可保育所に預かってもらえない母親たちが、行政不服審査法(※)に基づく異議申立てをする。先月の杉並区、足立区に続いて、明日(7日)は大田区と渋谷区の母親たちが区役所に異議申立て書を提出する予定だ。
母親たちは“保活”の苦しみをただ嘆くばかりでなく、自ら“お上”に訴え始めた。それは燎原の火のような勢いになりつつある。
きょうは日本の権力中枢である首相官邸に向かって、東京都内と埼玉市の母親たちが「認可保育所を大幅に増やしてほしい」とアピールした。(主催:新日本婦人の会)
生後7か月の女の子を背負った杉並区の母親(20代)は、アパレルメーカーのデザイナーとして育休前はフルタイムで働いていた。ゼロ歳児の我が子は認可保育所に入れるものと思っていたが、先月24日、区役所から『不承諾』の通知が届いた。
「この先どうして生活していけばよいのか不安になる。認可外保育所をあたったが、どこも定員一杯。“200人待ち”という所もあった。税金を払っているのに返ってきていません。もう黙っていられない。区だけの責任ではない。子どもがいても笑って働ける、そんな社会にしてほしい」―安倍首相の耳に届けとばかり、彼女は訴えた。
【夫の転職で入所内定取り消しに】
高層マンションの林立で子どもが急増し、認可保育所不足が深刻な江東区の母親も姿を見せた。生後11か月の子どもを抱いての参加だ。江東区の場合、ゼロ歳児の方が認可保育所に入り易いため、彼女はわざわざ昨年4月15日に出産した。
昨年11月、認可保育所への入所を申請。彼女は非正規公務員で、4月から復職予定だった。夫はフルタイムで働く正社員であることから、認可保育所の『入所内定』を得ていた。
ところが夫が転職し、新しい会社には4月1日から勤めることになった。フルタイムの正社員だ。にもかかわらず江東区役所は「子どもが入所する4月1日の時点で夫の勤務実績はゼロである」として内定を取り消したのである。彼女は「保育所がないと働けないんです」と涙声で話す。
官邸前でのアピールに続いて母親たちは内閣府本庁舎に足を運んだ。内閣官房 内閣総務官室・要請担当の市村豊和氏に安倍晋三首相あての要請書を手渡した。
「待機児童解消のため、国の責任で認可保育所の大幅増設を行ってください」などとする内容だ。市村氏は「官邸に提出します」とだけ答えた。
出産後も就労を希望する女性が増えているにもかかわらず、認可保育所の増設は追いつかない。役所の対応は杓子定規で無慈悲だ。産みたくても産める環境がなければ、少子化はさらに進む。
◇
※行政不服審査法
行政機関の処分等によって不利益を受けた国民が不服を申し立て、行政機関が審査する手続きについて定めた法律。審査請求(上級の監督官庁への不服申立て)と異議申立ての2通りがあり、異議申立ては、処分をした役所に対して行う不服申立て。審査請求ができない場合や、特に法律に定められている場合に行う。(総務省HPより)