読売が全力をあげる「原子力規制委員会」人事

官邸前で再稼働反対集会が行われた20日朝、一部メディアが原子力規制委員会の人事を報道した。=20日夕、官邸前。写真:諏訪撮影=

官邸前で再稼働反対集会が行われた20日朝、一部メディアが原子力規制委員会の人事を報道した。=20日夕、官邸前。写真:諏訪撮影=

 これほど国民をバカにした人事はない。福島原発事故の教訓は何だったのだろうか?9月に発足する原子力規制委員会の初代委員長に元原子力学会会長の田中俊一氏が内定したとされる。

 政府はこの人事を20日、国会に提示する予定だったが、一部メディア(読売、日経)に漏えいしたことから自民党が反発し、国会への提示が遅れている。読売と日経が国会提示当日の20日朝刊で報じ、各社夕刊で後追いした。

 原子力規制委員会は、これまで内閣府(原子力安全委員会)、経産省(原子力安全・保安院)、文科省(放射線モニタリング部門)に分散されていた原子力規制行政を一手に担う原子力規制庁の上に立つ組織だ。原子力規制委員会の委員長は強大な権限を持つ。今後、電力会社が予定する原発の再稼働をめぐっても影響力は絶大だ。

 その委員長に原発推進の中枢を担ってきた原子力学会の会長だった田中氏が内定したのである。電力会社との「秘密会合」を持ち、刑事告発されている原子力委員会の委員長代理も務めていた。田中氏は原子力損害賠償紛争審査会の委員としても、東電の利益に添う発言を繰り返した。「20mSv未満の地域は除染する必要はなし」は有名だ。原子力村の村長クラスなのである。

 タカをくくってはならない。来る総選挙で政権が変わっても、どうにもならないのである。独立委員会であるため任期の5年間は口が出せない。原子力村は血眼になって、この人事を政府に飲ませるだろう。読売新聞が社説で「この人事を急げ」と書きたてているのを見ればわかる。

原子力規制委員会の人事に異議を唱える緊急記者会見。=24日、衆院会館。写真:田中撮影=

原子力規制委員会の人事に異議を唱える緊急記者会見。=24日、衆院会館。写真:田中撮影=

 正気の沙汰とは思えない原子力規制委員会の人事に異議を唱える福島県民、学者、環境団体などが24日、国会内で緊急記者会見を開いた。原子力村の世論操作にひと役買った記者クラブメディアは記事を書くための取材ではなく、「反発度」を偵察に来ていた。

 出席者はそれを理解していたこともあり、世論軽視も甚だしい人事を徹底的に糾弾した。

 小島敏郎・青山学院大学教授(環境庁で公害被害者救済に携わる)は「暴走族のリーダーが暴走族取締り本部の本部長になるのと同じ」と言葉を極めた。

 『子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク』の佐藤幸子代表は地元の憤りを代弁した―「山下俊一(福島医大副学長)は私たちが何も知らないまま福島県放射能アドバイザーになっていた。今回の人事もこれと同じ。原子力規制委員会は原子力推進委員会だ」。

 双葉町の井戸川克隆町長がいみじくも指摘した。「福島の事故から何を学び、何を訴えるか。よく考え直さないと日本の民主主義はなくなる」。

 放射能汚染を避けて西日本に移住した人は数知れない。首都圏に住み続ける人々も自身や子供の健康被害に怯える。どこまで膨らむか分からない賠償費用は、当面国が肩代わりする。原資は我々の血税だ。

 今、声を大にして原子力規制委員会の人事に異議を唱えなければ、国民は一生電力会社の奴隷となるだろう。

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