原子力安全・保安院が開く専門家への意見聴取会は、多くの一般傍聴者が会場の経産省に詰めかける。同時に反原発を唱える人=極左と捉えてきた警察も私服刑事を大量投入する。
公安は、顔写真はもちろんのこと、傍聴者の氏素性も押さえているだろうな―筆者は常々思っていたが、案の定だった。
3日、保安院が開催した「地震・津波に関する意見聴取会」は、大飯原発下を走っているものと見られる破砕帯についても議論する予定だったため、福井県や関西方面などから市民約100人が傍聴に訪れた。
大飯原発が再起動した2日後であることから、傍聴席は緊迫することが予想された。傍聴するには事前申し込みが必要である。当然100人とも氏名、住所などを保安院指定の書式に書き込んだ。
ところが聴取会は、約100人全員が別室での傍聴を余儀なくされた。交通費をかけて遠方から訪れた人はたまったものではない。IWJなどがネット中継しているため自宅で視聴することも可能だ。新幹線に乗って遠くから来たのはナマを見るためである。
聴取会の終了後、記者団に囲まれた保安院の小林勝・耐震安全調査室長の口から驚くべき事実が語られた。
「傍聴人リストを警察に見せて相談した…(その結果)…別室傍聴とした」というのである。小林室長のコメントは、インターネットメディアを通じて流れた。
反発を強めた市民団体や環境団体が、福島みずほ事務所を通して保安院に質問状を出した。
「傍聴人リストの何を見て誰がどのように判断したのか?」との質問に、保安院は「大飯での抗議行動の状況等を踏まえ、前日の夜に別室傍聴も止むを得ないと保安院が判断した」と回答した。「枝野経産大臣の了解を得ている」という。
「リストは警察に渡したのか?」とする問いには「適切に管理している」と曖昧だ。脱原発運動に詳しい海渡雄一弁護士は「(保安院は警察に)リストを渡していない、とは言っていない」と話す。
リストは渡っていると見るべきだろう。個人情報保護法云々のレベルではなく、国家は原発に反対する人を徹底的に取り締まるつもりである、ということを肝に銘じるべきだ。
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