福島第一原発事故を引き起こした東電経営陣の責任を株主が問う株主代表訴訟の第1回口頭弁論がきょう、東京地裁で開かれた。請求総額は5兆5千億円と裁判史上最高である。経営陣のずさんな安全管理が株主に重大な損害を与えたことを示す金額だ。
原告団は請求理由の中心をずさん極まりない津波対策に置いた。訴状によると15mを超す津波が襲来するとした研究結果や警告を考慮せず、想定津波・波高を6.1mから1cmも上げなかった。
「超地震大国で安全に注意することなく原発を建設、運転した」「シビアアクシデントの対策不備」「2、3号機のベントと海水注入の遅れ」なども請求理由に加えている。
原告団の河合弘之弁護士によると東電からの答弁書は次のようなものだった―
・想定をはるかに超える津波に襲われた。
・国が定めた審査指針を守ってきた。
・事故後の対応もミスはなかった。
第1回目の口頭弁論となったきょうは、原告ら4人が意見陳述をした。事故当時、福島県田村市で農業を営んでいた浅田正文さん(71歳)も意見陳述をした。東電株主でもある浅田さんは、事故から2日目の3月13日に田畑を捨てて金沢市に避難した。
「福島第一原発の事故により一瞬にしてすべてを奪われてしまった。明らかな大公害であるにもかかわらず、経営陣は会社や株主に対して責任を取っていない…」(浅田氏意見陳述書より)
浅田氏は支持者への報告会で「昨夜は眠れなかった。この裁判が日本を創り直すきっかけになればいい」と話した。
社会的関心を集める大がかりな訴訟の場合、裁判所前はカメラマンや記者で黒山の人だかりとなる。ところがきょうは、テレビカメラがたったの2台、スチールカメラマンが1人だけ(写真)という淋しさだった。テレビ局は東電と株を持ち合っており、東電株が下がると自らの経営にも支障を来すからだろうか。新聞社はテレビ局の大株主であるから、当然影響を受ける。
原子力村のメディア支配が見えるような光景だった。司法も同じように原子力村の影響を受けるが、撥ねつけなければ日本は暗黒社会になる。
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