まるで脅迫状のような手紙が東京中野区に住む女性の自宅に届いた。差出し人は東京電力・中野地域料金グループ(営業センター)。「請求金額に満たない場合、当社窓口まで来て不足分を支払うよう」とする内容だった。「支払期日を20日経過すると送電をお断わりする」とも書き添えられていた。
原発の電気は使いたくないと思っていた女性は、拙ジャーナル『ATMで1円少なく振り込む』(5月3日掲載)を読み、4月分から実践し始めた。請求額が3,084円のところを3,083円振り込んだ。
すると東電から冒頭の手紙が送り付けられてきたのである。「威圧的だった。わざわざ交通費をかけて窓口まで払いに行かなければならないのかと思ったら、腹が立った。こういうことがあると普通の人は恐がって何もできなくなる」。女性はその時の感想を語った。
気の弱い女性に代わって知人の男性が、東電・中野地域料金グループ(営業センター)に問い合わせた。
東電側は事実を認めたうえで次のように説明した――
「全額を一度に払ってもらうというのが前提。分割払いはできない。今回は“単なる間違い”と思って請求書を出し直した。次回はもう、こう云うことはできません(請求書は発行しない)」
だが同じようにして「1円不払い」を続ける男性の自宅には、「1円の請求書」が最寄りの東電営業センターから毎月、送られてくる(写真下段)。集金人も訪問してくる。男性は川崎市在住だ。
男性は東電・中野地域料金グループ(営業センター)にこの問題についても質した。同センターは「個々の客への対応は事業所ごとに違う場合がある。窓口に来られない事情がある場合は“請求書発行依頼”を出してほしい」と答えた。応対した担当者の言葉に嘘がなければ、東電側を譲歩させたのである。
不払い運動をつづけている画家の大富亮さんは次のようにアドバイスする――
「東電から“窓口に払いに来い”と手紙が来ても、東電に電話して“請求書を出して下さい。原発に反対するためです。消費者の意見をしっかり聞いて頂ければ、支払う意志はあります”と伝えること。東電は請求書を送ってくれるはず。怯まずにやろう。」
不払いをめぐっては「払わないのであれば電気を使うな」という意見がある。Twitterなどでもよく見かける。これについて大富さんは次のような見解を示す―「電気は選べない。抗議のルートを確保しておくため東電の電気を使う。そして不払いをする。仮に自家発電をして東電の電気を使っていなくても、原発事故が起きれば、私の頭の上にも放射能は降り注いでくる」。
東電は大惨事を引き起こし国有化が決まっていながらも、ボーナスや年俸アップの原資のために電力料金を値上げしようと目論んでいる。非常識な独占企業に対していつまでも従順な消費者であり続ける必要はない。
《文・諏訪京/田中龍作》
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