主戦場が内幸町の東電から永田町の首相官邸に移った。大飯原発の再稼働を認める4閣僚会議が開かれる建物に向かって抗議の声を挙げるためだ。
「東電を許した訳ではないが、当面はこっち(官邸)。再稼働は政治判断だから」。身を切るような真冬の風が吹き付けていた頃から東電前に立ち、「原発は要らない」と訴え続けてきた太安萬侶(ハンドルネーム)さんは、転進の理由を語る。
きょうTwitterで「官邸前プチデモ」を呼びかけたところ、一人増え、二人増えした。東電前と同じ現象だ。
都内在住の主婦(ハンドルネーム「@omoto100」さん)は、二人の子供を連れて「再稼働反対」の声をあげに訪れた。1歳を背負い、3歳の手を引いた母親が権力の巣窟に向かって立つ。コントラストが痛々しい。
「普通の主婦が朝起きて先ずすることは、ガイガーカウンターのスイッチを入れることです。先日、幼稚園で瓦礫問題のビラを配ってきました。(マスコミや有識者の一部は放射能を気にし過ぎだと言うが)気にし過ぎじゃないんです。街で子供を見るたびに辛くなります。大飯(原発)だけでもいいから止めて下さい」。母親は体中から声を絞り出すようにして叫んだ。
柏崎刈羽原発隣の新潟県長岡市出身の女性(20代・ハンドルネーム「@usuke_mosomoso」さん)もマイクを握った。女性は現在都内でフリーターをしながら生計を立てている。「小さい頃から原発は当たり前の物としてあった。大飯が動いたら柏崎も動く。『原発要らない』という普通の人の声を聞いてほしい」。こちらも“普通”の人の訴えだ。
官邸に向かって彼女たちが「再稼働反対」を訴えている傍を1千人からなるデモ隊が通り過ぎて行った。消費税増税に反対するデモだ。弱者と普通の人を苦しめてばかりのこの国は、一体どうなっているのだろうか。
◇
『田中龍作ジャーナル』は読者の支援によって維持されています。