「ハンスト青年」→「埼玉の主婦」→「実母介護の主婦」と受け継がれてきた東電へのプチデモ。きょうはサラリーマンと演劇青年の男性2人が、警察に守られた巨大ビルの前で抗議の声をあげた。
2人はハンドルネームmercyさん(会社員・30代=埼玉県在住)と演劇家Kさん(30代=横須賀市在住)。
プチデモを始めたのは午前10時。吹きつける真冬の風がmercyさんの持つノボリを激しくはためかせた。ボールペンを持つ手がかじかむほど寒い。
「私たちはたった二人です。組織(政党)に入っているのでもないサラリーマンです。人は一人では生きてゆけません。電車を走らせる人がいて、治安を守ってくれるお巡りさんがいて…(中略)…原発事故で人と人とのつながりが壊れてしまいました」。mercyさんは身近な事柄を例に出して訴えかけた。「電車」はすぐ傍をJRが走っている。「お巡りさん」は目の前にいる。
Kさんが続いた。「去年からたくさんの人の死を見てきました。たくさんの悲しみを見てきました。でも防げるものは防ぎたい。人が死ぬのも悲しむのももう見たくありません。東電社員の皆さん、我々と同じ目線で生きてゆきましょう」。こちらも庶民感覚に訴えた。
mercyさんはプチデモを決行した動機を語る―「毎日誰かが(東電前プチデモを)やることが重要。ひとつひとつ実績を積み重ねて脱原発につなげたい」。
Kさんは「mercyさんを一人にする訳には行かなかった」とさりげなく語る。援軍が現れるのもプチデモの特徴だ。
2人の取り合わせが意外なことに驚いた。mercyさんは「右からのデモ」のスタッフを務める。Kさんは自称「ソフトな左翼」だ。
Kさんはmercyさんを目の前に置きながら「僕は左だから右翼は嫌い」と言いつつ、次のように話を続けた。「右翼とは原発を止めたいという一点でつながっている。原発が止まったらもう2度と会うことはないかもしれないけど…」。
mercyさんは「僕も一人だけだったら声をあげきれなかったかもしれない。きょうは二人いたから声を出せた」とKさんに感謝の念を表した。
政敵の助太刀に駆け付ける「ソフト左翼」とそれを有難く受け入れる「右デモ」のスタッフ。脱原発には右も左もないことを改めて実感させられる。名もない市民がツイッターでつながる。国家権力にとっては手強い勢力となりつつあるようだ。