原発のない未来をつくるため、世界の経験と英知を結集しようと横浜で14日から2日にわたって開かれていた「脱原発世界会議」。会場のパシフィコ横浜は、福島はじめ東日本の住民を絶望の淵に叩き込んだ巨大湯沸かし器の廃絶を求める人々の切なる思いであふれた。
原発災害の取材で出会った多くの人々との再会は懐かしくもあったが、被害の裾野の広さと苦痛の長さを感じさせて余りあった。
一方で大規模イベントならではの「出会い」に希望も見いだせた。大間原発の建設予定地ど真ん中のログハウスで暮らす小笠原厚子さんと、祝島で半農半漁をしながら上関原発に反対する木村力さんが顔を合わせた。大間原発と上関原発の反対運動家が顔を合わせるのは、これが初めてだ。
小笠原さんが「嬉しくて興奮する」と話すと、木村さんは「一人でよく頑張っている」とエールを送った。
小笠原さんが暮らす「あさこハウス」の電源は、すべて自家発電という。太陽電池と風車だ。井戸水を汲み上げるモーターだけがHONDAのエンジン発電機で賄われている。彼女は「世界の人に脱原発を訴えることができると思って来た」と目を輝かせた。
自然との共存を謳歌する小笠原さんと違って、木村さんは島での人間関係に苦労した。「親、兄弟でさえ賛成派と反対派で別れ別れになった」。木村さんはしんみりと語る。それでも「世界会議に来て原発に問題意識を持つ人が多いことに驚いた」と顔をほころばせた。
世界会議は「原発建設反対」の現場で体を張りながら戦っている当事者にも勇気を与えたようだ。