19日、日本外国特派員協会で開かれた記者会見で「福島のガン発生率を全国で最も低い県にする」と“迷言”した細野豪志・原発事故担当相。記者会見での発言内容を聞くと、『ミスター100mSv』の山下俊一・福島県立医大副学長が、原発事故後間もなく(4月1日)飯舘村で開いた非公開セミナーと基本的な考え方が同じことに驚く――
細野大臣「100mSv以下ということになると、疫学調査は行われてきたけれど、他のガンのリスクに隠れてしまい、隠れてしまうほど小さいものですから、放射線によるリスクの明らかな増加を証明することは難しい…」
山下俊一氏「ガンのリスクが上がるのは年間100mSv以上である。それ未満であればリスクはゼロと考えてよい」(セミナー出席者の質問に答えて)
細野大臣「放射性物質による影響がわずかであっても存在していたという風に考えましょう。一方でそれよりはるかに大きなガンのリスクが(福島)県民の生活の中にあるわけですね。その中から例えば喫煙を少なくする。栄養のあるバランスのよい食事をする。運動不足をしないような生活をする。それを県をあげてやることができれば、福島は長寿健康県になりうる」。
山下俊一氏「たばこを吸う方が(ガン発生の)リスクが高いのです …」「この会場にいる人たちが将来ガンになった場合は、今回の原発事故に関係があるのではなく、日頃の不摂生だと思って下さい」。
「福島のガンの発生率を全国で最も低い県にする」とした細野大臣は「専門家と議論して可能であると考えている」と自信を示した。「議論した」というのは『議論して洗脳された』という意味ではないのだろうか。新興宗教に憑りつかれた信者が、ご教祖様の高説を自信を持って語る光景をよく見かける。細野大臣の場合もそれだ。
【収束宣言の前日まで刷り込んだ】
前段で紹介した「細野演説」のベースになっているのが「低線量被曝のリスク管理に関するワーキンググループ(以下WG)の会合(レクチャー)である。
WGの構成を決めるのは「放射性物質汚染対策顧問会議」座長で原子力委員会委員長を兼ねる近藤俊介氏(東大名誉教授=原子力工学)。会合(レクチャー)は11月9日から、収束宣言前日の12月15日まで8回開かれた。細野大臣はこれに毎回出席し、専門家の話を聞かされた。専門家の選定は近藤座長の権限で、長崎大学、福島県立医大など山下俊一氏配下の御用学者が名を連ねる。
御用学者たちは手を変え品を変え「低線量被曝は安全です」と細野大臣を洗脳した。細野大臣が、まるで山下センセイが乗り移ったような演説をしたのも頷けるではないか。
飯舘村を訪れて「谷ひとつ潰して放射性物質の仮置き場を作りませんか」と持ちかけた田中俊一・福島県除染アドバイザーは、7回目会合の講釈師だ。外国特派員協会で細野大臣が「福島県を除染の拠点にする」とブチあげたのは、明らかに田中俊一氏の影響であろう。
WGを立ち上げたのは「放射性物質汚染対策顧問会議」。同会議は原子力ムラと官僚が、お膳立てをして内閣官房長官に決済(8月25日)させ発足したものだ。
官僚と原子力ムラの掌で踊る細野大臣もあわれだが、モルモットにされる福島県民は命と健康を脅かされるのである。