野田佳彦首相の国連演説に合わせて渡米した母親たちが、ニューヨークやワシントンDCで「脱原発」を呼びかけた。原子力利権の総本山であるアメリカの真っ只中で「原発を止めよう」と声を上げたのは、佐藤幸子さん(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク)、泉かおりさん(Shut泊&脱原発ネットワーク北海道)ら6人。
“どじょう総理”も、原発近くに住む日本の母親たちがアメリカまで追いかけて来るとは思ってもいなかっただろう。「世界一安全な原発を作る」「原発輸出を続ける」…彼女たちの懸念通り野田首相の国連演説(日本時間24日未明)は、原発再開に向けて踏み込んだものだった。
演説が行われている国連本部前で佐藤さん、泉さんたちは米国の反原発運動家と共に「国連よ、原発推進を止めなさい」と書かれた横断幕を掲げた。
日本文化センター前では、野田首相を待ち構えた。藩基文国連事務総長と共に通りがかった首相にマイクを握って訴えかけた――
「福島県民の声を聞いて下さい。子供たちの命を守って下さい。安全な原発などありません」。
10メートルも離れていなかったが、野田首相は見向きもしなかったそうだ。
佐藤さん、泉さんたちはニューヨークとワシントンDCで記者会見を開いた。主催は米国の反原発、反核団体だ。彼女たちが驚いたのは米国の記者たちが、原発事故の実情をほとんど知らないことだった。「福島に人は住んでいるのですか?」と質問が出たり、「事故は収束に向かっている」と思い込んでいたりした、という。
政府や東電の発表を垂れ流す日本の大メディアの記事が翻訳されて伝わっているからだ。
さらに驚いたのは、米国の電力会社のパンフレットだった。パンフいっぱいに広がるオバマ大統領の顔写真と共に「地球温暖化を防ぐには原発を増やすしかない」とのメッセージが刷り込まれている。パンフは民主党支持者の自宅に漏れなく配布されたそうだ。
米国の電力会社は、福島原発の事故がヨーロッパ諸国に与えた影響が自国にも広がることを恐れているのだ。
世界一の原発大国で「脱原発」を訴えた母親たちは、近く「姉さん被り」で経産省前に座り込む。「母親の力は原発をも止める」ことを官僚や政治家に分からせるために。