「100mSvまでだったら大丈夫です。全く心配ない」と嘯き、多くの福島県民を被曝させた山下俊一教授(現・福島県立医科大学副学長)が、またやってくれそうだ。
IAEA(国際原子力機関)やWHO(世界保健機構)などで“活躍”する放射線の専門家30人はじめ内外の研究者を集めて「国際専門家会議」が11日、12日の両日、福島市で開かれる(主催:日本財団)。山下センセイは会議の組織委員を務める。人選を任されているのだ。
放射線管理区域で働く労働者の安全基準を遥かに上回る線量を「心配ない」とのたまわった山下センセイは世論の袋叩きに遭った。このところ旗色が冴えない。被曝線量に甘い研究者ばかりを集めた「国際会議」で、自らの説に御墨付きを与えてもらい、起死回生をはかろうというのだろうか。
IAEAやWHOが入っているから客観的だなどと思ってはいけない。IAEAはソ連の水爆実験成功に危機感を募らせたアメリカが、核開発の主導権を手放すまいと1957年に設立した組織だ(※)。西側原子力利権の巣窟なのである。
WHOについても「世界保健機構」などという響きのよい言葉に惑わされてはならない。WHOはIAEAとの間で、「世界保健機構はとくに国際原子力機関が全世界の原子力平和利用の研究開発と実用化を促進、支援および調整する一義的責任を負うことを認める」とする協定(IAEA-WHO協定・第1条2項)を結んでいるのである。
筆者は山下センセイが委員を務める組織委員会が発表した、会議の開催目的を読んで腰を抜かしそうになった。「発信源によって異なる報道内容が流れる『情報災害』も加わる中で、科学的知見に基づく放射線健康影響について正しく情報を発信し伝達する取組みが不可欠であります」とあるのだ。
フリージャーナリストなどが福島第一原発の爆発事故直後から危険性を指摘してきたが、それは「情報災害」なのだそうだ。東電、政府、山下センセイの「安全」情報を垂れ流してきた記者クラブの報道はどうなのだろうか。
東電はメルトダウンを3ヵ月も隠し、政府は事故直後SPEEDIの画像を公開しなかった。記者クラブはこれらの事実を知っていながら報道しなかったのである。その結果、大勢の福島県民を被曝させた。「報道災害」はりっぱな「情報災害」ではないだろうか。
フリージャーナリストと共に福島原発事故の危険性を訴えてきた「市民放射能測定所」をはじめ約200の市民団体、環境団体などが9日、国際会議の主催者である日本財団に公開質問状を提出した。
【「国際会議の開催目的」、内部文書を入手】
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(※)
ビキニ環礁での水爆実験で国際社会の批判を浴びた米国が、「原子力の平和利用」を隠れ蓑にするために設けた組織でもある