これほどまでにいい加減だったのか。子供を学校に通わせる親たちの怒りは収まりがつかない。福島県の校庭利用にあたって、文科省が定めた放射線量の上限である年20ミリシーベルトは出所、根拠ともに不明であることが明らかになった。
連休谷間の2日、「20ミリシーベルト」の撤回を求める対政府交渉が持たれた(主催:グリーン・アクション/フクロウの会/美浜の会/国際環境NGO FoE Japan)。参院会館講堂には福島県や関東一円から子供の放射能汚染に危機感を抱く父母、環境団体など約200人が参集した。
政府側はまず厚労省、次に文科省・原子力安全委員会が出席した。福島の父母らは労働基準法と放射線管理区域に絡めて厚労省に質問した。労働基準法62条の②は未成年者が放射線管理区域で就労することを禁じている。
内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘・東大教授が指摘するように「放射線業務従事者でさえ年間20ミリシーベルトの被曝は極めて珍しい」のである。
父母「保育園で放射線管理区域と同じレベルで子供たちが遊ぶことについて厚労省はオーケーなのですか?」
厚労省「年間を通じてこの値(20mSv)を継続するということではない。数値は下がってきている」。
厚労省自体、年間20ミリシ-ベルトの被曝は健康上良くないということを認めているとも取れる回答だ。
「ノー(OKではない)と言って下さい」。父母たちはさらに問い詰めた。すると厚労省は「政府として決定したことなのでお答えすることはできない」と開き直るありさまだった。
【不自然な強弁繰り返す文科省】
20ミリシーベルトという数値を決めた、当の文科省も意味不明の答弁を繰り返した。「ずーっという意味ではなくてこれから(線量を)低くするという意味です」。
「納得できないっ!」会場から黄色い声が飛んだ。若い母親だろう。
さらに、文科省の強弁は親たちの神経を逆なでした。高木文科相が「除染の必要はない」と記者会見でコメントしたことについて父母らが追及すると、文科省の原子力政策担当者は「私たちの言った基準を守って頂ければいいという意味です」と言い放ったのである。
原発震災復興・福島会議の佐藤幸子・代表世話人が一喝した。「そんなに安全だというのなら福島の土を舐めて下さいっ」。佐藤さんは5児の母である。
佐藤さんらは交渉が始まる前、福島市内の小学校の土を厚労省と文部省の担当者に手渡しているのである。線量カウンターは30マイクロシーベルト/時を示し、ガーガーと不気味な音をたてた。1年間に換算すれば簡単に20ミリシーベルトを超える数値である。
文科省の説明が不自然なのには事情があった。文科省は先月19日、「20ミリシーベルトで差支えない」とする原子力安全委員会の決定を受けた、としている。
だが交渉の席で原子力安全委員会事務局を追及すると、正式な会議ではなく議事録も残していない、というのである。さらに驚いたことには「原子力安全委員会のなかには20ミリシーベルトを容認した者はいない」(原子力安全委員会事務局・課長補佐)というのだ。
出所も根拠も不明のまま一人歩きを続ける「20ミリシーベルト/年」。
かくもデタラメな政府決定から子供たちを守るため父母らは「避難、疎開、保養」の準備を始めた。
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