津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町。自宅を失った約9500人が町内・外での避難所暮らしを余儀なくされている。
山肌にへばりつくように広がる南三陸町旭ケ丘の避難所を訪ねた。避難所の公民館では命からがら津波から逃げ延びた12~13人が暮らす。ほとんどが高齢者だ。
支援物資もあり「物には不自由していない」(60代・女性)という。避難民にとって辛いのはフロがなく、トイレが屋外にあることだ。公民館から30メートル近く離れた仮設トイレまで歩かなければならない。気温が零下になる夜ともなれば、お年寄りには苦痛でしかない。東北地方特有の身を切るような風が体温を奪う。
「寒さで(トイレから公民館に)帰ってきたら、またトイレに行きたくなる」と彼女は話す。この寒さで風邪をひくのだそうだ。「ゴホン、ゴホン」、避難所のあちこちから咳込む音がする。
入浴できないのも苦しい。最寄りの避難センターまで行けば、自衛隊が沸かしてくれるフロがある。だが車も流されたため移動手段がない。
隣町の温泉センターが送迎付きのサービスを行っているが、現金の持ち合わせがないため、それも利用できない。着のみ着のままで逃れてきたたからだ。
津波の中を泳いで逃げた女性は「ずっとフロに入ってないので潮水を浴びたまま」と嘆く。
「早く仮設(住宅)を作って下さい」。前出の女性は避難所を訪れた地元選出の衆院議員に涙をためて訴えた。
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田中龍作の取材は読者に支えられています。