「3回も合意文書を交わしておきながら約束を守れないようじゃあ、政権とは言えない!」
独特のダミ声が国民新党の記者会見場に響いた。亀井静香代表は、憤懣やるかたない様子だ。党是とも言える「郵政改革法案」の今国会での成立が怪しくなった11月中旬のことである。亀井氏の怒髪は天を突いていた(写真)。
そもそも亀井氏が6月に金融・郵政担当相を辞任したのは、(先の)国会で郵政改革法案が先送りされたからだった。にもかかわらず、またしても『郵政』は見送られたのである。
亀井氏と菅直人首相は9日、「(来年)4月中の成立に向けて政府と与党が努力する」ことで合意した。だが、あくまでも『努力する』なのだ。
菅政権の下、郵政改革法案が陽の目を見ることはない。仙谷官房長官や前原外相らが所属する陵雲会が消極的だからと言われている。特に米国とのつながりが指摘される前原氏は、同法案に全く興味がないようだ。
一金融機関として今なお200兆円余りの資産を持つ「郵政」は米金融資本にとって大きな魅力だ。小泉政権の郵政民営化が米国の意向を受けてのものだったことは周知の事実である。
「(当時)郵貯と簡保を合わせて300兆円あった郵政マネーが民営化されれば市中に流れる。口をぱっくり開けて催促していたのが、米国金融資本とりわけ保険会社だった」―当時、郵政担当の審議官を務めた総務官僚は、米保険会社の名前をひとつひとつ挙げながら証言した。
郵政民営化の見直しをマニフェストに掲げて昨年の総選挙を戦った民主党は、政権を取ると真っ先に日本郵政の株式売却を凍結した。米国金融資本への流出を防ぐためだった。小沢一郎氏が幹事長として力を持っていたからなし得たことだ。これが米金融資本の逆鱗に触れた。
外交・安全保障に詳しい元政府関係者は次のように解説する。「アメリカが小沢に怒っているのは、安全保障ではなく郵政なんだ」。
亀井氏は「この亀井静香をCIAが暗殺しない限り、アメリカの言う通りにはならない」と言って、郵政民営化の見直しに政治生命をかけた。
結果、亀井氏は菅政権で干された。小沢氏は政治的に屠られようとさえしている。
菅政権が倒れるのは時間の問題。次期首相の最有力候補に挙げられているのが前原外相だ。いわずと知れた親米派である。年が明けると、亀井静香代表の髪はさらに逆立つことだろう。
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