インドネシアからの独立を求めて武装闘争を続けていたアチェ亡命政府をストックホルムに訪ねた時のことだった。メンバーは全員ゲリラで、遠く離れた北欧の地から現地の部隊を指揮していた。歴戦の兵(つわもの)である。
インドネシア中央政府の批判は存分に語るだろうが、こちらが聞き出したいのは、これまでの戦い方、現在の戦術、今後の展望などだ。“難しいだろうな、ダメ元で行こう。”多くを期待せずに成田からコペンハーゲン経由でストックホルムまで飛んだ。
現地での取材助手はツテを頼り手配していた。取材助手とは亡命政府へのインタビュー前日、打ち合わせのために顔を合わせることになった。筆者の前に現れたのは、神の恵みか、目も眩むような美女だった。顔の彫りが深いのだが、目鼻の線は柔らかい。吸い込まれるような碧眼。スウェーデン出身の大女優、イングリッド・バーグマンを生で見たら、こんな感じではなかろうか。
男所帯を30年も続けてきた亡命政府メンバーが、美女を前に高揚しているのが手に取るように分かった。しゃべる、しゃべる。
「80年代、リビアで配下のゲリラ兵士たちに軍事教練を受けさせていた」。カダフィ大佐が米国相手に吠えまくっていた頃のことである。
「2年に1度、現地の部隊に指示を与えるためにアチェに潜入帰郷している」。インドネネシア国軍に見つかれば、凄絶な拷問の末殺されるのは必定であるにもかかわらず、亡命政府ナンバー2のムハマド・マリク議長は時々帰郷するのだという。
ジャーナリストに明かしても大丈夫な20年前の話や、機密保持しなければ人命に関わることまで、縦横に語ってくれた。記事は月刊誌、映像はテレビ局が買ってくれ、写真はAP通信から世界中に配信された。取材が成功したのは一にも二にも美人助手のおかげだった。
どんな口の堅い男でも美女の前では口が軽くなる。スパイに美人が多いのもこのためだろう。
日本政治のメッカ永田町でも、優れた情報を入手するのは美人秘書だったりする。政治記者の鉄則は女性秘書に気に入られることかもしれない。親友の政治部記者は、出入りしていた事務所の秘書から、特ダネにつながる情報をしばしば得ていた。
美人秘書から政治記者に転じるケースもある。永田町に地獄耳を持つA記者だ。世界でも圧倒的に女性国会議員が少ない日本の場合、主流はやはり男性議員である。
オヤジ議員、ジジイ議員が美貌のA記者に一級の情報をもたらす。A記者は慎み深くもそれを記事にしないが、もし書いたら有力議員も含めて何人かは、次の選挙で落選するだろう。今後の政界再編にも大きく影響する。
女スパイは美女と相場が決まっているが、記者も同じなのだろうか。
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