原発事故から4年が経つ。政府が根拠のない安全性を強調して帰還を促すが、今なお12万1,585人(2014年末現在、福島県HPより)が、放射能を逃れて福島県内外に避難している。
避難者の多くは仮設住宅で暮らす。福島市森合町の仮設住宅を訪ねると、不気味な光景が目の前に現れた。
仮設住宅から30mほどしか離れていない場所にピラミッドの出来損ないのような巨大な山があるのだ。
高さ5m、四辺は数10m。地下も数m掘っているようだ。中味は除染残土である。
地元タクシー運転手は「つい数日前に黒いビニールシートがかけられたが、それまでは(むき出しの)黒いポリ袋が無数に積み上がっていて無気味だった」と話す。
ここは浪江町からの避難者が中心だ。浪江町は事故を起こした東電福島第一原発の所在地である双葉町に隣り合う。
仮設で暮らす男性(70代)は除染残土の山を見やりながら「気持ち悪いな」とポツリ。「賑やかなのは(除染で潤っているのは)花街(盛り場)だけでねえか」と吐き捨てた。
別の男性(80代)も同様に怒りを口にした―「借りた家(仮設)に住んでいなかったら文句言いに行くけどな。(避難者を)バカにした話だ」。
原発事故から逃げた先に除染残土の山ができる。彼らは放射能から追いかけられる宿命にあるのだろうか。筆者はそう思うとやり切れなかった。
東電幹部と政府の役人を業務上過失致死傷罪などで刑事告訴した原告団の武藤類子団長(三春町出身)は、この4年間を次のように振り返った―
「4年経っても福島の状況は何も良くならない。そればかりか、被害は広がった。除染のゴミは増える。仮設住宅での自殺者やうつ病も増えている。
放射能のある所にガマンして住めと言うのが国の姿勢。被災地をバカにしている。国や東電の責任はいまだに問われない。それでは復興はありえない」。
原発事故の因果関係は明確であるにもかかわらず、検察庁は東電幹部の不起訴を決めてしまった。
特定避難勧奨地点の解除が示すように、国は力づくで「放射能汚染はない」と言いくるめ、住めない所に住民を返そうとしている。棄民政策である。
民を見捨てる国に将来はない。