5月に実施されるウクライナの大統領選挙で当選確実とみられているのがユーリア・ティモシェンコ元首相だ。ヤヌコビッチ大統領が追放された2月24日の夜、幽閉を解かれ、公の場に姿を現した。
独立広場(マイダン)で「ヤヌコビッチのクソ野郎」などと下品な熱弁をふるう彼女を、欧米のメディアは悲劇のヒロインとして取り上げた。日本のマスコミも「美人すぎる指導者」などともてはやしている。
大統領選に当選確実の理由は欧米からもロシアからも「受け」がいいことである。実業家としてヨーロッパ諸国にビジネスパートナーを持ち、天然ガスの取り引きでプーチン大統領との間に“盟友関係”を築いてきた。米国はティモシェンコ氏が総裁を務める政党「祖国」のパトロンだ。
さらに大きな理由がある。マスコミだ。彼女が率いる「祖国」のメンバーがテレビ局などメディアのオーナーなのである。ティモシェンコ氏をめぐるニュースはトップ扱いとなる
ある大学教授は「ティモシェンコは庶民にとってロクなもんじゃない」と吐き捨てる。(本当に地面にツバを吐くようにして話した)
2011年、ティモシェンコ氏はロシアとのガス取引をめぐる職権乱用罪で実刑判決を受ける。ロシアが1,000㎥あたり250ドルで提供してくる天然ガスが、ウクライナの消費者の手に渡る時には350ドルになっていた。1,000㎥につき100ドルが彼女の懐に入っていたというのだ。
「ガスの女王」と揶揄されるゆえんである。確かに庶民にとってはたまったものではない。
有罪判決を受けるまでティモシェンコ氏は国策ガス会社の株の60%を保有していた。これは先にリポートした、国家予算の半分を有力政治家のために使う「お手当て」とは『別』である。
ウクライナでは政治家が国策会社の大株主であったりする。国家事業の中枢に座り巨大利権を独占する。政治家が国民の富を簒奪するシステムだ。ティモシェンコ氏もシステムの一角を占める。
アメリカの手先となりマスコミを支配すれば、選挙に勝ち国の経済を ほしいままに できる。東アジアのどこかの国と同じではないだろうか。